詩皺

　四年前、二十代前後の若者らが集団自殺を図った事件。しかしそれらは時を経て大勢の若者が抱く「自由」の象徴と昇華されていくことに。

　事件は遺体のほか、「詩」という彼らが生前に残したものがある。その「詩」こそ、社会に生きづらさを感じる若者の心を掴み、いわば救いの言葉であり、先々の人生の道標でもあった。

　自殺＝悲観なものだという認識は薄れていき、やがて若者の自死率は上昇していくことになる。一足遅れて政府が終息を図ろうと奔走するも、彼らが残した「詩」の影響力には到底及ぶことはなかった。

　そんな時代に生きる主人公の洸吉も同じように大人を嫌う。亡き母親をひどく恨み、全ての人が同じような思考で生きていると思い込んでいた。そんな彼の近所に住む蓮司と亜椛もそれぞれ問題を抱え、目まぐるしく変わる世の…続きを読む