ある者たちが残した「詞」を主軸に、今生との決別がテーマに置かれています。詞を求める者、詞を否定する者。生きていく中で感じる焦燥、葛藤、苦悩。作中の若者にとって、頼りにするものは周囲の人や芸術などではありません。残された「詞」です。「詞」はどこで、誰が生み出したものか……。文章の緻密さが物語を一層引き立てています。本作を通じて、対岸ではなく渦中にいるのだという認識のきっかけになることを願います。