主人公の木徳直人は拘束された状態で地面に転がっていた。
それが悪夢の始まり。
普段はクラスメイトであるはずの黒川に今、殺されようとしていた。
冒頭からサスペンススリラーのような殺人鬼との緊張感のある会話。
脱出のために策を巡らせる主人公。
この時点で面白いことは確実です。
殺人鬼との会話は脈絡がなく、不安定な石の上に立っているかのようで。
しかしこの脱出劇は序章に過ぎません。
彼女、ミズチの言葉から語られるのは魔術の存在。
こう聞くと某有名新伝綺小説を思い返す方もいるかもしれません。
しかし魔術や殺そうとも思っただけで殺せてしまうこと、使い魔、牢屋のような真っ黒な場所など過激な設定が独自性を生み出しています。
どうやらこれから様々な世界の敵と戦っていくようです。
ケレン味のある世界観やストーリーを楽しみたい方は読んでみてはいかがでしょうか。
【物語は】
プロローグではなく開幕という形で始まっており、その名称の通りそのまま物語は進んでいく。
主人公はピンチに陥っており、現在の状況とこうなった経緯(いきさつ)を冷静に分析し、危機から脱出しようと試みる。
【作風や物語について】
一話の終わりに噂話という形で意味深な会話の一部が明かされている。
特に記載はないが、一文一文が短いのでライトノベル、もしくはリズムを大切にしているのだろうか? と感じた。
物語の中で殺されそうになっているのは主人公の方だが、タイトルを見ると反対の意味となっている。
物語が始まったばかりの時点では、逃げることを目的としているため”タイトルの持つ意味”について二つのことが想定できる。
一つは主人公の心情が変わる。もう一つは意図せずしてそういう結果になる。
ただし、この”ミズチ”に関して肉体的に殺すのか精神的に殺すのかでも意味合いは違ってくるため、いろんな捉え方はできる。正解はどれなのだろうか。
もしくはもっと違うこと意味しているのかもしれない。
それと各小タイトルが非常に意味深に感じた。
のちに理由は明かされるが、主人公がピンチに陥った発端は彼女の異様な光景を目にしたからだと思われる。好奇心は時として自分を窮地に追いやるもの。
つまり、主人公が命を狙われたのは偶然でもなければ巻き込まれたのでもなく、自身の好奇心が招いた結果である。
【主人公について】
主人公は”生”に執着した人間だという印象を受けた。
最初の脱出時に冷静に分析し、自分の思い通りに事を運び実行した。
この場面では二つのルートがあったと思う。一つは本作通りのルート。そしてもう一つは彼女の気持ちを変えさせるルート。
計画を実行した時点では、後者のルートでも良かったはずだ。しかしながら確実に生き延びるには多少危険を冒してでも、前者のルートを取るべきだと判断したのではないかと思う。
つまり冷静に判断したものの危険を冒してでもそれに賭けたということは”生”に対する執着がそれなりにあるからではないかと思うのである。
その後も彼は選択を迫られていくことになる。
【物語の見どころ】
主人公はある理由からクラスメイトの女の子を尾行する。
そして見てはいけないものを目撃し、口封じのため(?)に殺されそうになった。しかしなんとかその場は機転を利かせ乗り切ることに成功。
もちろん、それで終わるはずがなかった。
主人公の命を狙っているのが彼の素性を知らない見ず知らずの人物でならまだしも、クラスメイトなのだからいつかは見つかってしまうことくらいは読者にとっても想定内だと思う。
だが分かっていても、実際その時がやってくるとハラハラドキドキする。
そしてあらすじを見る限りでは、これは序章にすぎずこの先に本当の苦難が訪れるのだと想像できるのだ。ここに至るまで意味深な言葉があったりし、この先がどうなるのか全く展開予測不能な物語だと思う。
この後、主人公は彼女からいろいろと疑問に思っていたことなどを聞くことになる。条件はあるものの、当初のように彼女から命を狙われる危険はなくなったと考えてもいいのではないだろうか。そしてここからが本当の幕開けとなるのだろう。
あなたもお手に取られてみませんか?
この物語の結末をその目でぜひ確かめてみてくださいね。おススメです。
*備考 二章二話まで拝読
第一章読ませていただきました。
結論といたしましては、本当に面白いです。時間はかかってしまいますが、完結までしっかり読みます。
まず、私自身が〝現実にある非現実〟が大好きです。
『木徳直人』が拘束された状態から始まり、謎の少女『黒川ミズチ』に関する謎が徐々に明かされるまで終始ドキリとしていました。
文字通り『謎』が多く含まれていて、そのどれもがこの時点ですべてを理解できるものではないと感じました。話は理解できているのに、核心が分からない。このもどかしい感覚が早く続きを読みたい!と、思う要因になっています。
全てを読み終わって、謎が解けた時に『ここがこういう伏線だったのか!』と、なるのが楽しみです。
文章の書き方についてですが、キャラクターの行動、心情、置かれている状況が緻密にえがかれていて、それがより緊迫感を出しているように感じました。
心情描写と状況説明は特に素晴らしいと思います。
それとギャップがあるように淡々とセリフのみで構成されている章末話の冒頭が特に大好きです。
重要である要素を一方的にセリフで構成する事によって、難しい内容でも邪魔な要素が一切ないためスラスラと入ってきて読んでいて気持ちよかったです。
面白い! ……長々とレビューをするよりも、もういっそコレくらい一言で伝えた方が逆に良いんじゃないか。そう思える作品でした。
しかし本当に一言で終えるわけにもいかないので、ちゃんとした感想も書いていきます。ですが冗談抜きで面白さを言語化するのが難しく、それでいて間違いなく「面白かった!」と断言できる一作です。
クラスメイトの小さな『異様さ』を目撃した『木徳直人』は、彼女を尾行した結果縛られて監禁されてしまう。自らを『ミズチ』と名乗る彼女は、間違いなく『異質なナニカ』を孕んだ殺人鬼で――。
そんな冒頭から強烈なインパクトが発揮されていて、読者を物語の世界へと一気に惹き込んでくれます。「最序盤は読者の興味をそそるオープニングにした方が良いよ」とWeb小説界隈では頻繁にアドバイスされているものの、それが中々できない・できていない作品も多い中で、本作は1ページ目からアクセル全開といった感じで、本当に素晴らしいと思いました。
緊迫感や臨場感の溢れる序盤から始まり、奇妙な同盟関係を結んだ直人とミズチが学校を舞台に『敵』と戦っていく展開も、非常にシリアスかつスピーディーで楽しめました。『魔術』という要素が学園伝奇モノや異能バトルものの側面を強めつつ、『膜』などといったオリジナリティ溢れる設定も光っています。
そして個性的なのは設定だけでなく、特にメインヒロインのミズチが狂気的かつ魅力的な登場人物でした。読者人気が高いのも納得です。
襲撃者達もそれぞれの『悪』を内面に抱え、バックグラウンドがシッカリと練られているために、小説のキャラクターでありつつも『一人の人間』としての人生や感触というものが、強く伝わってきました。血肉の通った人間として表現できている技量もお見事です。
そんな彼らが人間臭く、血生臭く彩った後半からは、もう怒涛も怒涛の展開といった感じでした。総じて『単調さ』や『退屈さ』といったものが一切なく、飽きることなく最後まで、夢中になって読み進めることができました。
序盤に抱いた直人とミズチの印象やキャライメージが大きく変わっていく終盤に関しては、圧巻の一言です。大どんでん返しが待っており、痺れるタイトル回収で名作認定し、エモすぎるエピローグは読後の余韻や満足感を十二分に与えてくれます。未見の人は、とにかく最後まで読んでくれ。それしか言えません。
とにかく『無駄な要素・展開』や『捨てキャラ』が全く見当たらない構成で、そしてそれは文章においても同じことが言えます。多少好みの分かれる文体かとは思いますが、必要な情報を必要なだけ描写しているのは素晴らしいの一言でした。
非常に完成度が高く、それでいて読んだ後には再読したくなる伏線がてんこ盛りです。恐らく読むたびに発見があって、三度読み、四度読みに耐え得る稀有な名作だと思いました。星3じゃなく5とか10くらい付けたいです。それくらい本当の本当に面白かったです!
簡素でありつつも何処か詩的な文章が、綿密に儀式を成している。
サディスティック、エロティック、グロテスク、そして、ピュア。
そういった目を惹く要素が煌めきながら、儀式を終焉まで見守り隠している。
読者は最後まで読んだ途端、儀式が終わった途端、漸く目の前に現れた世界に驚きつつも既にそれに沈み込んでいる。
そんな印象を受けました。
めっちゃ軽く言うと、「この小説やばない!? 世界観やばない⁉」です。
惜しい点が二点あります。
それはこの小説を読んで今レビューを書いている「私」にあります。
小説自体の問題ではありません。
一つ目は、この小説を理解する上で必要な知識を欠いていること。オカルトに興味がある方には「私」よりも深くこの小説を楽しめることでしょう。
二つ目は、「私」がくたびれた大人であること。前述に述べた目の惹く要素が「私」には浅くしか刺さらず、世界観に存分には引き込まれずに悔しい思いを致しました。
故に、この二点を含まない読者の方はどうか私の分までこの小説を楽しんで下さいませ。
具体的に言うと、「オカルトに興味がある、中高生(もしくは一般的な中高生と同じ程度のリビドーを持ち合わせている方)」でしょうか。
該当の方、お願いします。
同作者の別作品『ヒーロウ・イン!』は私にぶっ刺さったので、そちらは存分に楽しみますよー!
本作は今までになく斬新な発想で、本格的な設定と世界観が織りなすストーリーは、至高の娯楽へと昇華する。
主人公の木徳 直人(きとく なおと)は、ミズチという殺人鬼の魔女を目撃してしまう。
人の闇を浮き彫りにする、真に迫った表現力や、キャラクターの人生観や本気度が伺えるストーリー展開、強烈なインパクトのある戦闘シーンなど、この作品の魅力は凝縮され、あまりにも洗練され過ぎています。
多くの実力者達のお墨付きの、スニーカー大賞の最終選考まで残った、凄く素晴らしい秀作です。
「あなたもぜひ、このスリリングな世界観を堪能してください。
絶対に後悔させませんから」