完成された15万文字

 15万文字。
 スニーカー大賞の応募上限文字数です。
 本作の小説情報欄をご覧いただければ、次の文言を見つけることができるでしょう。

『総文字数――150,000文字』

 狂気です。偏執的なまでにこだわり抜いた珠玉の15万文字。
 ラスト2.5万文字あたりからはじまる怒濤の伏線回収、どんでん返しに次ぐどんでん返し、世界が2度3度と引っくり返る快感は圧巻。

 物語冒頭こそ、『殺人鬼のヒロインと、ヒロインに拉致監禁された気弱な主人公』というTYPE-MOON作品あたりで見たことのありそうなありきたりな始まり方でしたが、あるものが素晴らしすぎて、最後まで読んでしまいました。
 その『あるもの』というのが、主人公・直人の心境の変化です。
 冒頭では気弱なスクールカースト最下位男子で、ヒロイン・ミズチに振り回されっぱなしだったはずの主人公が、戦いに次ぐ戦いの中で魔術の力に目覚めていき、やがてミズチを凌駕し、その性格が――一人称の字の文が――じょじょに狂っていく、もしくは正されていく。
 この、スティーブンキング『シャイニング』のお父さんが悪霊に憑りつかれてじょじょに狂っていったような、真綿で首を絞められ続けて、やがてその苦痛が快感に変わっていくような呪わしい描写がすごい。

「直人、夜は眠れるか?」

 ですよ! 眠るようになったミズチと、眠らなくなった直人の対比!


 以下は、僭越ながら『まだ良くなるんじゃないか?』という改善点の提案です。

1. ミズチの真実(直人を殺せない、ウソがつけない)が判明するところは、もっともっと劇的にできないでしょうか? 例えばゲーム『BIOSHOCK』のネタ晴らしシーンのときのように。

2. 未執筆の第二部があり、それを以て完結とのことですが、ということは直人の正体その他、世界がもうあと5、6回引っくり返るような大・大・大どんでん返しが隠されているということですよね? それをこの15万文字の中にぶち込めば、とてつもない作品が完成するのではないでしょうか。

以上です。

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