あとがき

 ……という、暗い世界観で進んでいくお話でした。 


 この話の初期構想では〝大人をいかに悪く書いてみせるか〟という軸がありました。


 いえ……私の周りには尊敬できる大人の方々がいます。しかし私自身、残り一年もしないうちに同じ社会人になっていくわけで。大人として世の中で扱われる前に、若者としての最後の足掻きのような作品にしたかった節があります。



 〝詩〟と若者の自殺を中心に話は動いていきましたが、その敵として〝若者を救おうとしない大人達〟をどうしても登場させたい欲が次第に出始めました。


 しかし、そんな道理に背いているような人なんているのか? なんて構想段階では思っていましたが、いたんですよ。


 お金や時間が絡むと人は躍起になったり興奮したり、時には人殺しさえもできてしまう生き物ですよね?(威圧)


 ですから抑止政策の一環として、税金を多用しようと言う結論になりました。


 若者の自殺数が増加した世の中と言う暗い世界観ではありましたが、その中でも何かに縋ったり、救いを求めたりするもんじゃないですか。最近でいえばAIやロボット?孤独を埋めるために話しかけられるやつとか。


 そんなポジションで〝詩〟を置いたわけですが、若者はそれらを良くも悪くも私生活に多くの影響を与えてしまいます。蓮司の友人(雅史)を助ける場面とか分かりやすく、雅史は死ぬ事を選んだけど、助けに入った若者は誰かを救うことを選ぶ。



 こう言った真逆も起こり得てしまう。そこへ更に育った家庭環境も絡めちゃおうと、構想段階では非常に楽しい想像ばかりがありました。


 そしてもう一つ、この作品で徹底している事がありました。それは若者を多く登場させる事。人は成長するにつれて、わがままとか私欲を人前で隠すのがまるで美学だと思っているかのように振る舞います。(ここから偏見→)



 女性はご飯をがっついて食べないとか、男性ならば弱々しい姿を人前で見せないとか。でも本心は堅苦しさを感じているんじゃないのかな、なんて思ったりもします。


 そういった立ち振る舞いは社会に出れば自然と身についていく気がするので、話に登場する若者は皆、わがまま放題、尖った感情出しまくりにしました。



 そして裏の主人公とも呼べる政治家の上松。結果としては量産政治家に成り果ててしまったのですが、きっかけは若者を救うものであり、最初は街のあり方に疑問を持っていました。


 彼も世の中の流れに人生を狂わされた一人として書いていたのですが、なんだか悲しくなってきちゃって。意外と気に入っていた人物だったので(泣)



 おそらく〝詩皺〟が学生生活最後の作品になるだろうなぁと思っていたため、書きたかった情景描写や設定などをふんだんに盛り込んだので満足しています。


 なんなら今まで書いてきた作品にはあまりない、ハッピーエンド的な終わり方ですし。


 そのせいか、話がアチコッチに分散してしまって……。


 洸吉と母親の過去の話にはいくつもの伏線を散りばめました。合っているかは分かりませんが、何処かしらに繋がっていく言葉が多く、書いていて楽しかったです。



 急に時間軸が飛んだり場面が変わったりと、忙しなくなってすみません。


 作中の〝詩〟を考えるにあたって、最も多く浮かんできたのはアルバイトの休憩中で、それに次いで電車内でした。誰かと誰かの会話が不意に聞こえてきて、そしてそれはあまり私が普段使いしない言葉で。どうも頭に残ってしまって、書いている時に思い出してしまう。


 ちなみに路上で酒を抱きしめて眠る老人というフレーズは実際に目にしてから書きました。


 終電間際の北千住駅付近、缶酎ハイを片手に壁に寄りかかって眠る老人がいたんです。上半身が眠気でぐにゃりと曲がりつつも、お酒だけは水平に持って溢さないようにしていて。


 そんな光景を見て、この人の意識はなくとも本能でお酒を大事にしているんだなって、思ったんです。思い込みが激し過ぎますね。

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詩皺 篠宮椛 @mr_gra92

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