恭順
好きな人が出来たらあの2人との関係は終わる。
それが今の私にとっていいことなのか悪いことなのか分からないけど、顔以外の全てを写真や動画に収められている私はあの2人から離れたい気持ちがある。
その気持ちに気づいた私は学校で好きな人探しをしてみるけど、あのアカウントが原因で人っ子一人私に近づくことはないしアバズレと呼ばれている女に好かれたところでゴールは1つ。
だから私のことを何も知らない人を好きになりたいと思った私はマッチングアプリをインストールした。
年齢確認はネットの海に捨てられていた運転免許でするりとOKをもらい、早速マッチング。
そう思ったけど、好みの顔は見つからないしみんな思ったより大人でプロフィール欄に書いてあるカタカナ英語とリアル英語の読解が難しい。
…はあ、こんなのSNSでフォロワーを眺めてるのと変わらないよ。
そんなことを考えながら暇なお昼休みを過ごしているとある写真に目がクギ付けになる。
チリチリと痛んだ髪の毛に整っていそうな顔立ちを萌え袖した片手で隠している写真。
その人はあの日見た大学生っぽいお兄さんに似ていてちょっとだけ興味を惹かれた。
私はなんの紹介も書き込んでないプロフィールにLIKEを送り、その日はおとなしく家に帰って暇を潰しているとシンデレラタイム3分前にマッチングしたと通知が入った。
それに私は小学校で経験した初恋の気持ちを思い出すように胸の高鳴りを感じて明日の朝にどんなメッセージを送ろうか考えていると、また通知がきた。
『起きてる?』
と、友達とのメッセージかのような軽い口調の短文に私はすぐ返信してしまう。
『起きてる。もうちょっとで寝るけど。』
私はちょっと夜更かしをすることにして駆け込みお兄さんもどきのケイさんと会話を重ねていると、私が親にだめと言われた映画ドラマ見放題のサブスクに入ってるから一緒に見ようと誘われた。
それだけで私はウキウキになり、すぐにOKを出して今週末のお昼頃に会うことになった。
けれど、当日の私はいつもの怠惰で2時間近くの寝坊をかまし、起き抜けでケイさんに謝罪のメッセージを送る。
すると数秒で返信が来た。
『今からでもいいよー。俺は今日1日休みだから。』
と、なんとも優しいメッセージをもらったので私はすぐにベッドから飛び上がり、しっかり寝癖を取ってリップで唇をウルウルツヤツヤにしてから電車に飛び乗る。
私の地元の駅から10分でケイさんの家に着く。
歩いて30分で着く近距離な出会いに私はあの2人に感じなかった奇跡を感じていると、ケイさんの家がある最寄駅についた。
私は駅についたら電話してと言われていたので改札を出る前から電話をかけるとケイさんは3コールで初めての電話に出てくれた。
ケイ『今どこ?』
優愛「改札出たとこ。」
…声、かっこいいぃ。
これでブサメンだったらちょっとショックだな。
そう思っているとまた堕ちて沼りそうな声が私の耳に入ってきた。
ケイ『駅からまっすぐ歩いて坂上がったとこにある牛丼屋見つけて。』
優愛「はーい。」
私はケイさんに言われた通り駅から出てまっすぐ視線を向けた方向にあった牛丼屋に早歩きで近寄る。
優愛「見つけた。」
ケイ『その牛丼屋脇にある小道入って突き当たりを左行って。』
その言葉に合わせるように私は足を早め、ケイさんが案内してくれる家に近づく。
ケイ『行ったらすぐの曲がり角のとこ曲がって。水色のアパート、分かる?』
優愛「うん。」
ケイ『そこの301。階段しかないから頑張って。』
そう言ってケイさんは音声案内を終了して私が階段を上るのを待つらしい。
ここまで来て私が一切インターフォンを鳴らしに来なかったらどう思うんだろうと必要のないことを考えながら若干段差が高い階段を登り、少し体温が高くなったところで3階に着くと目の前に301の部屋を見つけた。
私は顔を軽く手で仰ぎ、緊張と火照りを取り除いてからケイさんがいるという301のインターフォンを押した。
すると、トントントンと少し重たいけれど軽快な足音が聞こえてカチャンと鍵が動いた音と共に扉が開いた。
ケイ「来てくれてありがと。どーぞ、入って。」
私は初めてみるケイさんの顔につけ忘れたマスカラでは上がらないまつ毛を驚きで上げられることに初めて気づきながらも、見開いた目で衝撃を受ける。
私よりも高い身長。
私よりも潤ってる肌。
私よりも整っている顔立ち。
そんな完璧に一目惚れしてしまった私にケイさんは欠点を見せた。
それは部屋に案内するときに見せてくれた後頭部にあるちょっとした寝癖。
しかもやっぱり毛質はちょっと痛んでる。
きっと茶髪だから染めすぎて痛んじゃったんだろう。
あの日見たお兄さんとは多分違う人だけど、きっと私の好きな人になる。
出会ってすぐの7秒間で私はそう確信した。
環流 虹向/愛、焦がれ
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