安全
あれれれ…、なんでこんな事になってんだっけ…。
私はストーカー対策として送りの車を待つためにコンビニへちょっと買い出しに行った。
けど、その帰りに突然脇道から飛び出てきた手に引かれて臭い水たまりの上で外壁に押さえつけられてる。
これが意地悪なケイさんか、白波さんだったらこんなに冷や汗はかかないんだけど、今日私のラストを見送ったお客さんが目の前でなにか言っている。
けど、何も聞こえない。
多分、突発性の難聴とかじゃなくて全神経で逃げ道を考えろと体が言ってる。
だけど…、どうすればいいんだろう…。
そう思った瞬間、買い物袋と一緒に手に持っていた携帯がバイブで震えた。
その瞬間いつもの感覚が戻り、目の前にいるお客さんのいつも聞いていた声がじゅわっと耳の中に溶けるように聞こえ始めた。
だけども言葉の羅列は頭の中に入ってこなくてただの音が淡々と入ってくるだけ。
そのことでまだいつもの自分になりきれてないと自覚した私はずっとそらし続けていた目線を上げ、お客さんを見る。
すると、そこには何かを求めている目があって私の経験上で答えを導くなら私をどうにかしたいと言ってる気がする。
けど、それは絶対嫌。
こんな悪夢、さっさと終わらせなきゃ。
私はチラチラと横目に見える人通りを確認しながら携帯の横ボタンを5回押し、寝起きが悪い頭を起こすように爆音のアラームを鳴らすと目の前にいた人は驚き、一歩後退りをした。
その隙に私は臭い水たまりを蹴散らしてこちらを注目している人混みの中に飛び込み、沢山の視線を集めながらお店へ戻った。
優愛「…危な。」
私は息を切らしながらぐっとこらえていた本音を漏らすと、ビービーとうるさいブザー音にお店に残っていた数人の女の子と店長がやってきて何事かと慌てた顔でやってくる。
それに少し申し訳なくなって慌てて消すと店長になにがあったのかと根掘り葉掘り聞かれた。
けど、突然のことでなにを言われたのか、体を触られていたのかも分からないくらい逃げることに必死で、支離滅裂な私の言葉は話を聞く店長に上手く届かなくてしばらくはお休みになってしまった。
数日は大人しく家に帰ろうかな…。
そんなことを送りの車で考えながら救いになった携帯を見ると、いつもより30分遅い時間の下に私を助けてくれたメッセージがあり、見るとケイさんからだった。
『おつ』
たった2文字。
いつも以上に素っ気ないし、いつものお誘いメッセージじゃないけどこれだけで今日の嫌なことが全部吹き飛ぶ。
「もう少しで自宅近くの公園に着きますよ。」
と、ドライバーさんが見慣れた風景を走りながらそろそろ降りないといけないことを知らせてくれる。
優愛「あ、はーい。」
私はちゃんと忘れ物がないようにカバンの口を閉じ、道横に停まった車から降りる。
優愛「今日もありがとうございます。」
「うん。無事に家ついたらいつも通りメッセ頂戴ね。」
優愛「はい。おやすみなさい。」
ドライバーさんに手を振り、車が去っていった一本道を辿るように家へ帰るとお風呂上がりのお母さんと鉢合わせしてしまった。
母「…またバイト?」
優愛「そう。」
お帰りを言ってくれなくなったお母さんはいつものように呆れた表情をし、早く寝なさいとご飯さえまだな私の時間をまた管理しようとしてくる。
大学に入るまでもう我慢。
最近始めたおまじないを自分にまたかけて素直な子の返事をし、さっさと自分の部屋に入ってすぐにメッセージチャットを開く。
『無事、帰宅しました。今日もありがとうございます。』
っと。
あとはまだ送ってないケイさんに。
『ありがとー。』
可愛くハートでもつけときたいけど、ケイさんは彼氏じゃないから変に嫌われたくない。
だから私もケイさんと似たような素っ気ない文を送ると、数分で返信がきた。
しかも、お誘いのメッセージ。
『土日どっちか一緒にしょーろんぽ食べよ。』
何も知らない気の抜けたメッセージが今の私にはとっても嬉しい。
ケイさんは私の事なんとも思ってないんだろうけど、こういうのがずっと好きな人でい続ける理由なんだよなぁ。
また好きが増した私はにやけながらケイさんに返事をし、急遽暇になった週末のお昼前にケイさんの家へ行くことにした。
環流 虹向/愛、焦がれ
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