好奇
これで毎日のアイロンでパサついた麻紐みたいだった私の髪の毛は絹糸になってくれるはず。
私はお得に買えたヘアケア商品が入っている袋を膝に置き、待ち合わせ場所に指定された自販機横のベンチで待っていると白波さんが大きなリュックに少し体持っていかれながら駆け寄ってきた。
白波「お待たせー。片付けに時間かかっちゃった。」
優愛「大丈夫。それよりお腹減ったー。」
私は一番お得なセール品をメッセージで教えてもらったことをきっかけに白波さんと友達のようにメッセージを交わすようになり、今日は初めての食事。
だからわざと制服から私服に着替えて白波さんの隣で歩いていても不自然じゃないようにした。
白波「優愛ちゃんの腹ペコバロメーターは?」
優愛「せんぱー。」
白波「それは胃がなくなっててもおかしくないね。」
そんなくだらない話をしながら白波さんの行きつけだという焼き鳥屋さんに入り、炭火焼きで香り高い鶏肉をたくさん食べさせてくれた。
優愛「美味ちー。初めて10本食べた。」
私はお店特製のタレを口いっぱいに広げながら、家で食べる倍の本数が入った串入れを眺める。
白波「こういう所に友達と来たりしないの?」
と、白波さんはしっかり私の地雷を踏みつけた上、重い前髪下で少し吊り上がった眉毛に気づく様子もない。
優愛「みんな真面目だから居酒屋っぽいとこには行かないよ。」
私は1人でオレンジジュースのようなカクテルを呑む白波さんのグラスを指し、目だけでおねだりしてみる。
白波「優愛ちゃんは不真面目?」
そう言いながら白波さんは持っていたグラスを少し私に近づけて手を離した。
優愛「脳みそはFランで行動力はSランだね。」
私はオレンジとピーチの香りがする甘い液体を口に含んでみると、少し鼻に抜けるアルコール臭で軽くくしゃみをしてしまう。
白波「可愛い。そういう子はタイプ。」
と、前に冗談を言った口ぶりとは違う冗談を漏らした白波さんはノンアルコールにしか入っていないストローを自分のグラスに挿し、私のドリンクにすると自分は新しいお酒を呑んでまた私にお試しをさせる。
そんなことをしていると私の体が火照ってきたのでちょっと休憩するためにトイレに行き、個室の小窓から夜風を浴びる。
…気持ちいい。
だから大人ってお酒が好きなんだなー。
私は初飲酒を思っていたよりも早め済ませてみんなより2、3段早く大人の階段を登った気分になった。
そんなほろ酔いな私を心配したのか白波さんが少し気まずそうに女子トイレの扉越しから声をかけてきたので一緒に席に戻る。
白波「これ飲んだら帰ろっか。」
優愛「うん。」
そこから残りのファジーネーブルと枝豆を5つ口に入れたところで私の記憶はぷつんと途切れ、次にしっかり意識と記憶が繋がった時には見たことない薄暗がりのワンルームで少し乾燥した頬の上にパリついた液体が付いているのに気づいた夜10時を過ぎた頃だった。
優愛「…あれ?」
私は体の上にかかっている毛布にしがみつき、いつのまにか脱いでいたコートが足元の壁にかかっているのを見つける。
「起きた?」
そう眠そうに声をかけてきた白波さんは私が寝ていたローベッドの真横にある座椅子で半袖とパンツ1枚だけの姿で鈍く光る携帯画面から私に目線を移した。
優愛「…白波さんの家?」
白波「さん付けは寂しいって言ってるじゃーんっ。」
と、白波さんは私の質問に答えず携帯を座椅子に捨てるとそのまま私に乗りかかるように抱きついてきた。
私は何がどうして抱きつかれるまでの仲になったか思い出せないでいると、少し遠くから水が流れる音が聞こえて誰もいないはずのトイレから人が出てきた。
白波「せんぱーいっ、優愛ちゃん起きましたよー。」
聖「んじゃあ、続きしよっか。」
そう言って2人は私がしがみついていた毛布を剥ぎ取り、いつの間にかニットしか着てない私の体を弄り始めた。
優愛「え…っと…、ちょ…」
白波「優愛ちゃんって“らむちゃん”なんでしょ?」
と、白波さんはSNS上での私の呼び名を口にした。
私はその言葉を聞いて一気に全ての力が抜け、2人の欲望がそのまま現れる体に抵抗する気さえなくなる。
白波「3人でいっぱい気持ちいいことしようね。」
そんなことをTVの明かりだけがついている薄暗がりの部屋で吐いた白波さんは先輩主体に私の初めてをまた奪っていった。
環流 虹向/愛、焦がれ
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