排除
…全然、連絡来ない。
私はケイさんとのメッセージチャットの履歴を見て、多分終わってしまった繋がりをもう一度繋げ直せないかと淡い期待を持ってメッセージを打とうとしていると電話が来た。
優愛「…はーい。」
『どこー?見当たらん。』
と、野中先輩は間抜けな声で私に居場所を聞いてくる。
優愛「改札前にいますよ。先輩たちはどこにいるんですか?」
私以外の3人はすでに合流出来ているらしいけど、なぜか1つしかない改札口前でみんなが見当たらない。
野中『改札前じゃなくてすぐ横にあるコンビニ前に行くからそこ来て。』
優愛「はーい。」
私は言われた通り視界の中にあった緑色のコンビニ前で立って待つけれど、3人は一向に現れない。
野中『あれー…。なんでだろ…。ここで迷うってことある?』
と、向こうの3人が話し合っている中で聞こえた駅名に私は鳥肌が立つ。
優愛「あ、あの…っ。」
野中『うん?』
優愛「
野中『え…っ、
私と野中先輩との間でとても気まずい空気音が流れると誰かが携帯を取り上げた音がした。
七星『優愛ちゃん、駅間違えた?』
優愛「…まちがえた。」
間違え過ぎたが正解の言葉だけど、ショックすぎて七星ちゃんの言葉を真似するしか脳が追いつかない。
七星『待ってるよ。来る頃にはちょうどお昼になるし、合流出来たらランチにしようよ。』
優愛「でも…、映画館の時間が…」
七星『映画はまだ夜の部あるから!遅れた分は遅くまで遊んじゃえばいいの!』
強気な口調で優しいことを言ってくれる七星ちゃんに私はお礼を言って、急いで電車に飛び乗りいつも間違える乗り換えも今回はちゃんと電光掲示板とマップアプリとにらめっこして、しっかりと3人がいる駅へ向かってくれる電車に乗った。
…待っててくれるのは嬉しい。
けど、待たせちゃってるって思うと気持ちが疲れる。
そんな私の自己中な一面がまた出てきたのも今はストレスの疲れを取るために空いていた車内の椅子に座り、30分近くの暇を潰すようにワイヤレスイヤフォンから流れてくる曲を目を閉じながら聴いていると急に混んでしまったのか端に座っていた私の隣に誰かが座った。
その距離感に若干痴漢の疑惑を感じ、目をそっと開けて電車の窓に反射して顔が見えた男に私は思わず目が飛び出ると、隣にいるケイさんは窓ガラス越しに見た私の顔で口元が緩み肩を震わす。
今日のケイさんは今も就活中みたいでピシッとスーツにツルツルの革靴でちょっとだけタバコの匂いをさせていた。
それだけで心臓が高鳴るのにケイさんは私の携帯にメッセージを入れてくれた。
『よく会うね。』
その久しぶりのメッセージと会話始めが嬉しくて私も携帯でメッセージを送る。
『3ヶ月くらい会ってないよ。』
私はちょっとだけ意地悪をしようと思い、そう送るとケイさんは鼻で小さくため息をついた。
『忙しかった。』
その一言にいろんな『忙しい』が詰まってる気がして、『お疲れ様』という労いの言葉だけじゃケイさんの疲れは取れなさそうで、なんて言葉を送ろうか迷っているとケイさんが連続でメッセージを送ってきた。
『今から来る?』
と、家デートのお誘いが久しぶりに来た。
けれど、今は七星ちゃんたちが待っているからケイさんとはこの電車でしかデート出来ない。
『これから友達と遊ぶの。また今度。』
私がそう送るとケイさんはメッセージを見てから携帯をポケットにしまい、交換するようにいちごミルクのアメを取り出すと包み紙ごと口に入れて指先で引っ張り雑に包装を解いた。
それから3駅分、ケイさんはいちごミルクの香りを私の周りに漂わせて心変わりしてくれないかと言わんばかりに電車が揺れるたびに私の方へもたれかかってくる。
けどさすがに…、待っててくれてるから…。
私は何度もケイさんの家に行くか、七星ちゃんたちの元へ行くか気持ちが揺れ動かされているとあと1駅で目的地の駅に着く距離まで来てしまった。
私は大胆に肩にもたれかかってきているケイさんの顔を覗き込んでみると、目を閉じて気持ちよさそうに寝ていた。
どうしよう…。
本気寝してる。
けど、あとちょっとで駅についちゃう。
私は仕方なくケイさんの肩を軽く叩き、起きてもらおうとするけれど全然反応がない。
そんなことをしているとあっという間に駅に着いてしまい、電車の扉が開いた。
優愛「…あの。」
私は勇気を振り絞ってケイさんに声をかけたけれど、ケイさんは本当にお疲れみたいで全く起きてくれない。
あと数秒で扉が閉まる。
けど、ケイさんの体を支えている自分の体は動かしたくない。
でも、ここで七星ちゃんたちを待たせてる。
だけど、一番優先したいのはやっぱり…。
そんなことを考えていると、電車の扉は閉まり動き始めたと同時にケイさんのカバンが自分とケイさんの太ももの上に倒れてきた。
あーあ…、ケイさんは本気寝でこの時間の記憶はないし、七星ちゃんたちを予定時間よりも待たせちゃう。
ケイさんってどこで降りる気だったんだろう…。
そう思いながら私は七星ちゃんたちに謝罪メッセージを送ろうと、携帯を入れていたカバンを漁っているとそのカバンで隠れていた片手をケイさんが握ってきた。
私は音楽を聴いてるのがもったいなく感じ、イヤフォンを取るとケイさんの頭が一瞬浮いて口が動いた。
ケイ「終点まで。」
と、私しか聞こえない息の声で拘束したケイさんはまた私の肩に頭を乗せて眠り始めた。
それを窓ガラス越しに見た私はケイさんと同じように初めて乗る電車で終点まで寝過ごすことにした。
環流 虹向/愛、焦がれ
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