不満
友達が出来ても、一緒に過ごすたびにまた別れがやってくる。
3年生の智さんと野中先輩はあと3ヶ月ちょっとで卒業。
七星ちゃんも受験のためにもう少しでバイトを辞めちゃうらしい。
せっかく学校に行くのが楽しくなってきた所なのにその理由がなくなっちゃうなんて、神様も学校も時間も大嫌い。
仲良くしてくれるみんなとのんびり過ごせる最後は年末いっぱいだから全部空けときたかったのに急に家庭教師をつけられてしまった。
しかも、週4。
なるべくバイトを入れて七星ちゃんと会う予定だったのにこれじゃあ年末に辞めるまで片手分しか会えない。
…本当、親が嫌い。
家族が嫌い。
親戚の叔父さん叔母さん、従兄弟も嫌い。
みんなもう黙ってほしい。
私は学校の宿題と家庭教師に出された課題で追われてるのに、冬休み初日から来た暇人親戚一同の騒ぎ声に腹が立つ。
自分のためならともかく、お前らの見栄に付き合うために勉強したくない。
なんでない脳みそでこんなよく分からない問題を解かないといけないんだろ…。
親族たちの声がリビングから溢れ出てくることに苛立ちがピークに達した私は抱えていたクッションを鍵をかけている扉に投げつけ、自分の身をベッドに投げ落とす。
優愛「…うっせんだよ。環境、環境、言うならお前らがまず黙れよ。」
私は意味もなく枕に言葉を埋めてストレス発散していると、ワイヤレスイヤフォンで聞いていた音楽さえ止まり私の怒りを増強させた。
優愛「もう…、うざった…ぁいっっ。」
ベッドから起き上がった私は机の上に置き去りにしていた携帯を取り、画面を見てみるとまさかのケイさんからの電話で音楽が止まったことを知り一気に気持ちが高まる。
優愛「もしもし…?」
私はすぐに電話に出てみると通話は何故かすぐに切れてしまい、ただの間違い電話かと残念がっているとメッセージが来た。
『寝てると思った。』
と、お昼の14時に私の睡眠を疑ってくるケイさんは何をしたいんだろうと思っていると、続けてメッセージが来た。
『暇なら来る?』
行きたい。
けど、16時から家族みんなでおもちゃ屋さんで子どものご機嫌とテーブルゲーム買ってから夜ご飯なんだよな…。
行きたくないな…、いつもつまんないもん…。
私は『行く。』と言うメッセージをケイさんに送る前にまずはこの家から脱出を試みる。
オシャレしすぎると遊びに行くってことがバレるからダボっとニットにスキニーパンツのラフセットでコンビニに行く程にしよう。
堂々とだけれど、足音は鳴らさずに私は玄関付近にあるリビングのすりガラスに自分の影が写らないよう廊下を静かに歩いていると、案の定勘がいいお母さんに見つかってしまった。
母「どこ行くの?」
優愛「…コンビニ。」
母「じゃあ、おつまみ買ってきてもらってもいい?」
と、お母さんは扉近くにある棚上に置いてあったカバンから財布を取り出し、お札を数枚手に取った。
優愛「でも…、ちょっと遅いかも…。」
母「なんで?」
優愛「…分からない問題があって、カフェで友達に教えてもらうことになったから。」
母「じゃあコンビニなんて言わないでよ。最近頑張ってるから好きに使って。」
そう言ってお母さんは私に2000円を手渡し、怪しまずに玄関で見送ってくれた。
一応これで今日のつまらない夜食はスキップ出来るはず。
そう思うと気分が晴れてさっきまで自分をイラつかせていた家族にお土産のおやつでも買って行こうかと思う。
けど、まずはいちごみるく買おっと。
私はケイさんの家近くにあるコンビニでいつも通り飲み物のいちごみるくを手に取り、帰りのウォーキング用にいちごミルクのアメも買っておく。
これで今日はケイさんでいっぱいの日になれる。
そんなウキウキ気分で私は坂上の脇道にあるケイさんの家に向かった。
環流 虹向/愛、焦がれ
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