認知
大学生と高校生が付き合うのは元の高校が一緒だったりするけど、七星ちゃんと智さんは違う。
けど、出会ったのは高校時代だから付き合っていてもOK。
そんなあやふやな線引きに私はまたケイさんのことを考えていると、季節外れの線香花火を楽しんでいた野中先輩が私に1本の虹を渡してきた。
野中「勝負しよ。」
優愛「何か賭けますか?」
私は手を繋いでコンビニに行ってしまった年の差カップルを目で追いながら野中先輩に挑戦を言い渡す。
野中「勝ったら相手のお願い1個叶える。」
優愛「いいですよ。」
私のお願いは2つくらい早く年を取りたいってことだけど、そんなのは無理だから後で肉まん買ってもらおう。
そう思いながら2人同時に火をつけ、火の玉に全集中を注ぐ。
そうしていると花火の赤ちゃんが産声をあげるようにハラハラと火花を弾けさせて成長していく。
野中「お願いは何?」
と、まだ花火が落ち切っていないのに質問されたので私はふと隣を見ると、野中先輩は絶対火の玉が落ちないように両手で線香花火を支えていた。
そんな必死な野中先輩が面白くてつい肩が震えてしまい、そのわずかな振動で私の線香花火はアスファルトに落ちてしまった。
優愛「落ちちゃったので野中先輩の教えてください。」
私はバケツに線香花火を投げ捨ててまだ花火を支えている野中先輩を見る。
すると、野中先輩は寒さで耳が赤くなっていたのをだんだんと顔全部を赤くして花火を落とした。
野中「…これからは
と、野中先輩は火の玉みたいな顔を私に見せないよう、自分の膝に顔を埋めてお願いしてきた。
優愛「それはどういった意味で…?」
野中「好きって意味で。」
そう言って野中先輩はサラサラの前髪とモコモコのダウンの間から真っ赤な顔と潤んだ目を私に見せてお願いしてきた。
野中「半年だけでいいからお願い。」
優愛「…半年?」
私は野中先輩に何故半年なのか聞くと、野中先輩はずっと私に秘密にしていたことを教えてくれた。
優愛「留学ですか…。」
野中「そう。だからそれまで一緒遊ぼう?」
アメリカの大学は日本とは入学時期が違うみたいで野中先輩は9月から新生活が始まるっぽい。
そんな理由で野中先輩が私のそばから離れるなんて思いもしなかったし、智さんたちにもまだ知らせてないという。
優愛「名前呼びで遊ぶだけでいいんですか?」
野中「…半年だけ、ね。」
優愛「好きなのに?」
私は決定的なことを言ってくれない野中先輩にやきもきしていると、野中先輩は丸めていた背中をまっすぐ伸ばし少し春の匂いがする空気を肺いっぱいに入れてひと息で言葉を繋いだ。
野中「彼氏として名前呼びしてほしいし、2人だけでデートしたい。」
と、野中先輩は私に見せたことない真剣でまっすぐな目をして素直に言葉をくれた。
優愛「じゃあ優愛って呼んでください。」
そう言うと野中先輩は牡丹の花火みたいにふんわり笑って大きく頷いた。
私はそんな野中先輩とちゃんとお付き合いをするために幻影のような2回目の初恋を閉じ込めて高校生活最後の年を迎える。
環流 虹向/愛、焦がれ
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