防衛
シーツの擦れる音。
肌が密着して弾ける音。
ベッドが軋んで泣く音。
それと一緒に聖さんの口から漏れてくる吐息の音が私の耳を支配する。
ただ、音が鳴って体の中を使われる時間。
そんなのはずっと前から何度も繰り返してきたのに何故か満たされるものは何もない。
それは聖さんが私を使い尽くしても、何度も『好き』や『可愛い』と言われても、もう満たされることはなくて現実と幻想を使い分けられなかった私はホテル前解散で1人になり、上手く巻けなかった帯を押さえながら駅へと向かう途中、着信が入った。
『優愛ちゃん!聞いて!』
電話に出てみると、七星ちゃんがいつにも増して元気な声で喋る。
それを聞いて私は何故だか安心感で目だけで泣き、七星ちゃんが話したいという話題を先に口に出してみる。
優愛「哲さんから告られた?」
七星『え!?そう!…え!知ってたの?』
優愛「2人を見てれば分かるよ。」
私は笑うしかない現実に足元がふらつき、そばにあった花壇の石段に座って体と心を支える。
優愛「付き合うの?」
七星『…う、うんっ。』
七星ちゃんはとっても可愛くて声だけでも照れてるのが分かる。
それに私は幸せを感じて笑っていると、電話の向こうで七星ちゃんを呼ぶ哲さんの声が聞こえた。
私は2人の邪魔をしないとお兄さんと約束したので、すぐに電話を終わらせてひとりになる。
すると、ベッドの上では出なかった声が溢れ出てただでさえ浴衣で人目を引くのに、泣いてる姿でも目を引いてしまう。
こんな風に人の気を集める予定なんか無かった私は誰か迎えにきてくれないかなと思うけれど、そんな人はいない。
七星ちゃんは哲さんと初デート。
白波さんはお仕事。
ケイさんは気ままな既読無視。
最近、いろんな人と関わってきたけど思ったより友達が少なかった私はお祭りで使わなかったお金でシャツとズボン、新しいパンツを買ってトイレで普段通りの休日を過ごす私になる。
けど、こんな泣きっ面で帰ったら家にいる親が何かあったか問いただしてくるだろうからやっぱりあの家は私が帰る場所だとは思えない。
だから私は気持ちが赴くままにあの家の前に行った。
そしていつも通りインターフォンを鳴らし、扉を開けてもらう。
「あれ?どうした?」
また驚いている白波さんの家に私は押し入って、すぐにお風呂と洗濯機を貸してもらう。
白波「俺に会いたくなったー?」
と、聖さんと繋がりがなくなったらしい白波さんはお風呂上がりに水を飲む私に笑顔で話しかけてくる。
優愛「…お祭りがつまんなかっただけ。寝る。」
私は誰の笑顔も見たくなかったのでベッドに潜り、白波さんがいる座椅子の方に背を向けていると背中がとても温かいもので包まれる。
白波「残念。けど、俺と行く祭りは絶対楽しいよ。」
そう慰めてくれる白波さんだったけど、シャツの下に手を伸ばしてきた。
優愛「…後で。今は眠いから。」
白波「分かった。」
私のお願いを聞いてくれる白波さんは私が眠りにつくまでずっと私の心臓近くに手を置いて、指先で暇を弄んだ。
環流 虹向/愛、焦がれ
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