第4話 無限の可能性

 『ぼくたちの魔法なら効くかも!』


 念話が届いた方向にいたのは、同じスライムの集団。

 でも、通常のスライムより水分を多く帯びているように見える。

 すると、テイム済のスライム達が反応した。


『わあ! 水スライムくんだ!』

『久しぶりだねー!』

『水スライムくんは、水魔法を使えるよ!』


「水魔法を!?」


 彼らは水スライムというらしい。

 たしかに水魔法なら、炎耐性のあるオオカミにも効くかもしれない。

 僕はすぐさま行動に出た。


「みんな、僕にテイムされてくれないか!」


『うんいいよー!』

『たのしそうだからねー!』

『ごはんくれそうだからねー!』


 二十匹の水スライムをテイムすると、ステータスに変化が現れる。


ーーーーー

アケア

MP :1440/1630


ギフト:スライムテイム(150)

スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】

魔法 :火魔法 水魔法(←New!)

ーーーーー


「よし、僕も水魔法が使える!」


 MPが増えたのと、水魔法の習得を確認できた。

 あとは力を合わせるだけだ。


「みんないくぞ!」

『『『【洪水球】ーーー!』』』


 みんなと協力して、【業火球】と同等の威力を持つ【洪水球】を放つ。

 水スライムの数は少ないが、その分僕が多大なMPを使うことで、魔法の威力を高めたんだ。


「ウオオオオン……オ、オォォ……」

「やった!」


 水魔法が弱点だったのか、炎をまとったオオカミは倒れた。

 すごい、これが水スライムたちの力か。


「みんな助かったよ! ありがとう!」


『そうでしょー!』

『どういたしましてー!』

『その分ご飯ちょうだいね!』


 こうして危機を乗り越え、水スライムという新たな仲間を手にして、僕たちは無事に安全地帯を見つけるのだった。





「もう真っ暗だ」


 夕方過ぎ、偶然見つけた洞窟どうくつにて。

 

 魔物はいないようなので、僕たちはここで夜を過ごすことにした。

 周りは岩壁で覆われている為、警戒は前方のみで済むためだ。

 これからの拠点にしても良いかもしれない。


「今日は色々あったなあ」


 寝る前に、今日一日を振り返ってみた。


 朝に【祝福の儀】を受け、そのまま勘当。

 森に捨てられるも、スライム達のおかげで半日を生き延びることができた。

 それどころか、今は家よりも幸せなぐらいだ。


 またそれは、衣食住に至ってもだ。


『ぼぼー!』


 あるスライム達は、目の前でたき火をしてくれている。

 火があるとなんだか落ち着く。

 簡単になら、ここで調理もできるだろう。


『気持ち良いでしょー』


 また、あるスライム達は、自慢のボディを生かしてお布団になってくれるそうだ。

 僕と触れ合えて嬉しいみたい。


『次は見張りよろしくねー』

『はーい』

『お肉くうぞー』


 そして、あるスライム達は交代で警戒をしてくれている。

 これ以上ないぐらいの待遇だ。


 ただ、やっぱり少し申し訳なさもあって。


「みんな大丈夫? 疲れない?」


『大丈夫だよー』

『たくさんお肉くれたから!』

『食べ物のお返しはぜったい!』

『あんなに美味しいの初めてだよー』

『明日からもよろしくねー』


 でも、スライム達はこの調子だ。

 

 というのも、どうやらスライム達だけでは、直接森の魔物を倒すのは難しいらしい。

 いつもはがいなどを漁り、なんとか生きていたそうだ。

 それが僕のギフトや指示が相まって、新鮮なお肉を食べられたんだとか。


 つまり、食の見返りということらしい。


 お互いにとって良い関係ならば、僕も気持ち良い。

 明日からもちゃんとご飯をあげないとね。


 それから、そういえばと思った事を水スライム達にたずねてみる。


「みんなはどうして水魔法を使えるの?」


『どうしてだろー?』

『水辺で生まれたから?』

『ねー、湿り気あるしー』


 詳しくは分からないみたいだ。

 ただ、聞く限りは生まれた環境に由来するのかも。

 だったら、他にも気になることが出てくる。


「もしかして、水以外にも属性を持ったスライムとかはいるの?」


『いるよー!』

『ぼくは雷スライムくんと友達だよー!』

『風スライムくん見たことあるー!』

『すごい物知りな長老スライムさんもいるよー!』

『知らないスライムくんもいるかもー!』


「ええ! そんなに!?」


 予想以上の答えが返ってきて、思わず驚いてしまう。 

 だけど、これは妙だ。

 スライムにそんな話は聞いたことが無い。


「まさか……」


 ここから推察できるのは、スライム達も環境に順応しているということ。

 この魔境の森は、至る所が魔力に満ちている。

 その恩恵でスライム達も進化を遂げているのかもしれない。


 そして、そんなスライム達をテイムすれば、僕も強くなる。

 【スライムテイム】には数の制限がないので、スライムの種類が増えるほど、僕ができることは増えていく。


 まさに“無限の可能性”と言えるだろう。


「よし。次の目標は決まったな」

『『『そうだねー!』』』


 こうして、僕は生活基盤を固めつつ、色んなスライム達に会いに行くのだった。




 ──そして、半年後。

 成長を遂げた僕たちに、ついに転機となる日が訪れる。

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