第38話 瘴気の先には
「よし、行こう!」
魔境の森“最奥”を前に、アケアは気合を入れ直す。
それには周りのスライム達も続いた。
『『『いこうー!』』』
総勢1300匹。
他に割いている最低限のスライム以外は全て連れ、アケアは最奥に挑む。
目的は二つ。
“魔族の王”の復活を阻止すること。
原住スライム達を助けることだ。
「じゃあ、調査開始だ!」
『『『おー!』』』
ぞろぞろと引き連れたスライム達と共に、アケアはいざ
「薄暗いな……」
まだ昼にもかかわらず、視界は良くない。
瘴気の影響で先が見通せないのだ。
スライム達も電車ごっこのように前後を繋いで付いて来ている。
だが、体調に問題は無かった。
「これが【耐性・超】か」
原住スライムをテイムして、三種の耐性付与がより強力になった。
今までは
視界の問題もMPを温存しているだけのため、いざとなれば解決できるだろう。
『こっちこっちー!』
先頭は助けた原住スライムが進んでくれる。
仲間の元まで案内してくれるそうだ。
そうして、しばらく進んだところで原住スライムは立ち止まる。
『一回周りを見た方が良いかも』
「了解!」
アケアは風魔法を灯し、斜め上空に放つ。
魔法は少し行った先で弾け、周囲の瘴気を一時的に飛散させた。
すると、開けた視界に光景が映る。
「ここは……!」
生い茂った木々を抜けると、そこは平原。
入口は狭めだったが、最奥にも森と同じような景色が広がっていた。
それを前に、アケアは考えを巡らせる。
(“最奥”は思っていたより広いのか……?)
通路が狭いだけで、砂時計の形のように最奥も広がっている可能性はある。
そんな事を考えていると、スライム達が前方を指した。
『アケア、あれを見て!』
「……! でっか!」
向こうに見えたのは、魔境の森の“近辺の主”クラスの魔物。
それも一体ではなく、ゴロゴロいるようだ。
アケアはそこで一つ気づく。
(原住スライムのスペックが違う時点で気づくべきだった。よく考えればそうだ……)
原住スライムは、森のスライム達の十倍のMPを持っていた。
ならば、そこに生息する魔物もまた強い。
つまり、この先は──さらなる危険地帯である。
「……みんな、気合を入れて行くぞ」
『『『おー!』』』
そうして、アケア達は慎重に歩を進めていった。
★
その頃、とある暗い場所にて。
「おい、あいつはどうした」
一人の男魔族が口を開いた。
誰かを探しているようだが、それとは別の者が答える。
「早速、力試しに行ったみたいですよ」
「あんだと? ったく、我慢できねえ奴だな」
すると、男魔族はふっと笑う。
「あの程度でくたばってくれんなよ、スライムテイマー」
★
「うおおー!」
『『『うおー!』』』
若干気の抜ける声を上げ、アケアとスライム達はコンビ技をかます。
従魔が飼い主に似るのは本当のようだ。
彼らが相手にしているのは、最奥の魔物。
「グオオオオ……」
近辺の主クラスとはいえ、今のアケア達は負けない。
だが、ホイホイと倒せる相手ではない。
スライム達にも継続的に耐性を付与しているため、MPはそれなりに消費していた。
(MPはもう少し温存気味にするべきか……)
先の状況も考え、魔法の使い方を考える。
しかし、相手は待ってはくれない。
「よし、次はあれを倒して──」
「グガアアアアアッ!」
『『「……!?」』』
次の標的を定めた瞬間、魔物は瞬殺される。
アケアでも数発を要する魔物をだ。
上空から魔法を放たれたよう。
「あらあら。意外とかわいい顔をしてるのね」
「誰だ……!」
すると、宙から一人の女魔族が降りてくる。
ふふふっと笑みを浮かべた魔族は、人差し指を口に当てながら名乗る。
「私はハーティア。伯爵級魔族よ」
「ハーティア……?」
「ふふっ、気づいたかしら」
聞いたことのある響きだ。
アケアが勘づいたのと同時に、ハーティアは口にした。
「私はハーティの双子の姉」
「!」
「だからあ──」
そうして、ハーティアが魔力を溢れさせる。
「ま、ハーティより強いのは確かね」
「……!」
アケアにいきなりの刺客が襲いかかる──。
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