第37話 推測と予感
『ぼくの仲間をたすけて』
瘴気の中から出てきたスライムが、助けを求めてきた。
僕は治療をしながら、すぐにスライムを連れて拠点へ。
「これでもう大丈夫かな」
以前エリン様に使った『完全治癒薬』を用いると、スライムはその場でぴょんぴょんと跳ねた。
『わあい! 体がかるーい!』
「元気になって良かったね」
『うん! ありがとー!』
特に問題は無さそうだ。
だけど、瘴気の色が取れると、スライムは特徴的な色をしていた。
通常スライムよりも“濃い青色”をしていたんだ。
「君は何スライムなの?」
『わからない。でも、みんなこの色をしているよ』
「そっかあ。長老スライムさんは何か知ってる?」
『ふむ……』
長老スライムさんは先程から考え込んでいる。
すると、何か思いついたように目を開いた。
『もしかすると、先祖で生き別れた者たちかもしれぬな』
「え!?」
『我らの先祖は、どこかから移住して来たと聞いた事がある』
かつてのスライム達は、もっと大きな集団だった。
でも、ある時をきっかけに移住した者たちがいたらしい。
移住して各地に散ったスライム達は、時を経て僕にテイムされたそうだ。
色んな環境に生息していたのは、そのためなんだとか。
「で、その時に移住しなかったスライムが、今も瘴気の中にいるってこと?」
『おそらくな』
救出したスライムは、濃い青色をしている。
確かに森の黄緑を摂取したら、色が混じって水色になりそうだ。
他のスライムも同様に、環境に変化して色が変わったのだろう。
「つまり、このスライムは?」
『“原住スライム”と呼ぶのがふさわしいかもしれぬな』
「おお……」
スライム達にも色んな物語があるみたいだ。
それほど森で生きていくのは大変なんだろう。
一通り推測したところで、僕は原住スライムに聞いてみる。
「あの瘴気はいつから発生したの?」
『おじいちゃんの頃にはあったらしいから、五十年前ぐらいかな』
五十年前と言えば、魔族の活動が見えなくなった時期と被る。
なんだか、きな臭くなってきたな。
「そこからずっと瘴気に耐えていたの?」
『うん。苦しい時もあったけど、その度にぼくたちも耐性を得たんだ』
「さすが原住スライム」
『でも最近、瘴気がさらに濃くなってきて」
「……!」
最近ひどくなってきた?
瘴気が森へ浸食を始めたのと関連しているのか?
「長老スライムさん、これって……」
『うむ。なくはない話じゃな』
ここまでの話が全てつながっていたとすると、とんでもない予想はできる。
まず、魔族は何らかの理由で、五十年前に森の最奥に身を潜めた。
その影響で、森の最奥は瘴気に汚染されるようになった。
そう考えると、瘴気に魔族の魔力が含まれているのも納得できる。
そして、魔族は最近また見かけるようになった。
ならば、同時に最奥で動きがあってもおかしくない。
「でも、最奥には一体何があるのかな」
『瘴気の
長老スライムさんは険しい顔で続ける。
『じゃが、瘴気の地帯は五十年動かぬまま』
「ということは?」
『その間、力を蓄え続けた“魔族の王”がいるかもしれぬ』
「……!」
その表情には焦りも見える。
『その“魔族の王”が動かぬまま力を蓄え、結果的に瘴気が生まれている』
「それって……」
『うむ。今は動けぬ状態なのだろう。もし復活すれば恐ろしい事態になりうるぞ』
「……!」
これはあくまでも推測。
だけど、僕の悪い予感はそれが真実だと言っているんだ。
それに、目的はもう一つある。
「原住スライム達も助けに行かないとだからね」
『た、大変そうだけどお願いします!』
「もちろんだよ」
原住スライムくんにうなずきながら、僕は手を向ける。
「そのためにも君の力を借りたい」
『うん!』
「よし──【スライムテイム】!」
原住スライムくんをテイムすると、能力が還元された。
ーーーーー
アケア
MP :30100/30100
ギフト:スライムテイム(1421)
スキル:スライム便利系 スライム強化系 スライム戦闘系
魔法 :火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 雷魔法 氷魔法 光魔法 闇魔法 基本魔法 特殊魔法 治癒魔法 強化魔法(←New!)
ーーーーー
変わったのは、二箇所。
まず、原住スライムは一匹でMPが100増えた。
これは種族の強さなのかもしれない。
そして、強化魔法に(New!)が入っている。
確認すべく早速開いてみた。
「わっ! すごい!」
【物理耐性付与・超】【魔法耐性付与・超】
【弱体化耐性付与・超】
強化魔法の内、三種の耐性付与に“超”が付いている。
さらに強力な魔法になったんだろう。
これが原住スライムの耐性か。
「これなら瘴気でも安心して進める!」
『うむ。準備をして明日には出発せねばな』
「うん!」
僕たちは魔境の森“最奥”を調査することを決めた。
『アケアー』
最後のお風呂で英気を養っていると、スライムが訪ねてくる。
各地との通信をしてくれるスライムだ。
『エスガルドからだよ』
「わかった。つないでくれる?」
『りょー』
すると、向こうから声が聞こえてくる。
「アケア様、セレティアです」
「あ、どうしたの?」
「……単刀直入に言います。アケア様は危険な事をなされるんですよね」
「!」
鋭い質問に、僕は正直に答える。
「どうしてわかったの?」
「アケア領から出られる時、難しい顔をしておりました」
「あはは、セレティアにはお見通しみたいだね」
「アケア様……」
心配してくれている声だけど、引き止められはしなかった。
「ご無事で、とは言いません。アケア様を信じておりますから」
「……!」
「ですから、お気をつけて」
「うん!」
それから、後方からは違う声も聞こえてくる。
「また王都へ来いアケア! 寂しいではないか!」
「シルリア!」
「そうだよー! また一緒に依頼をしようアケア君!」
「フィルまで!」
あちらもあちらで元気に活動しているみたいだ。
これは無事に帰ってこないとね。
「みんなありがとう! 帰ったら報告するよ!」
「はい!」
「うむ!」
「うん!」
こうして、僕は魔境の森“最奥”へ向かうのだった。
★
<三人称視点>
その頃、魔境の森“最奥”にて。
「いよいよ来るな」
「ええ。これで
魔族たちは不敵な笑みを浮かべて話す。
話題の中心は、テイマーアケアだ。
「伝説のギフト【スライムテイム】をね」
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魔族の企み、そして原住スライムを助けるため、いざ魔境の森“最奥”へ!
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