第3話 多大なる恩恵

 「一度休もっか」


 スライム達と共に、ギガピッグを倒した。

 色々ありすぎて疲れてしまったので、少し休むことにする。


 しかし、その間にギガピッグの体から光を発し始めた。

 その光はギガピッグの体を離れ、僕の体へ取り込まれていく。


「あ、これは!」


 これは“経験値”だ。


 魔物を倒すと、倒した者へ魔力などが流れ込んで来る。

 それでギフトに応じたパワーアップができるらしい。

 テイマーの場合は、MPや魔法が増えたりするのかな。


「なんだか力があふれてくる……」


 強い魔物ほど、経験値は大きい。

 経験値を初めて得たのもあるけど、ギガピッグの経験値がそれほど多いんだ。

 やっぱりすごいな、“魔境の森”の魔物は。


 そうして感心していると、スライム達が話しかけてきた。


『ねえねえ!』

『ブタさん食べないの?』

『すっごく美味しそうだよ!』


「え!? い、いやあ……」

 

 ギガピッグは丸焦げになっており、正直あんまり食べたくない。

 それに毒がないとも限らない。

 食事の代償に死亡なんてごめんだ。


 と、そんな心配を察したのか、スライム達は続けた。


『ぼくたち分解できるよ!』

「え?」


 食物連鎖の最下層にあたるスライムは、いわゆる分解者にあたるのかな。

 詳しくは分からないけど。

 

 そうして、スライム達は動き始める。


『ぶんかーい!』

『ぶんかいー!』

『悪いものを取り込むよー!』


「す、すごいな……」


 本当にギガピッグの分解を始めたみたいだ。

 また、ギフトウインドウにも気づくことがあった。


ーーーーー

アケア

MP :790/1020


ギフト:スライムテイム(100)

スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】

魔法 :火魔法

ーーーーー


 スキルの中に【スライム分解】というのがある。

 僕はこれを使用してみた。


『わ、いつもより力が湧いてくる!』

『うおーやるぞー!』

『もっとぶんかいだー!』


 スライム達の働きを強化できたみたいだ。

 見るからに動きが早くなり、そのまま待つこと一分ほど。

 

『分解したよー!』

『毒素はないよー!』

『アケアも食べられるよー!』


「みんなすごいよ!」


 【業火球】によって大部分は焦げていたが、可食部が残っていたらしい。

 ついでに毒素も抜いてくれたそうで、これなら食べられそうだ。

 

 戦闘も分解も含めて、全員で得た食べ物だ。

 みんなにお肉が行き渡ったところで、僕たちは手を合わせた。


「じゃあ、みんなで──」

『『『いただきます!』』』

 

 僕がもらったのは、ギガピッグのお腹辺りのお肉。

 バラ肉っていうんだっけ。

 見た目がまだ若干生だったので、少し【火球】で炙って食べてみる。


 口にした瞬間、自然と目がパッと開いた。


「美味しい!!」


『でしょー』

『よかったあー』

『おいしいよねー』


 こんなに美味しい食べ物は初めてだ。

 フォーロス家ではお肉はおろか、ほとんど残飯ばかりだったから。

 それに、これもスライム達が頑張ってくれたおかげだ。


「ありがとうね、みんな」


 思わず感謝を伝えると、スライム達も笑顔になった。


『うん-!』

『いいよー!』

『ぼくたちもお肉食べれてうれしい!』


「あははっ、そっか」


 自然と、あの家にはなかったような温かい空気になっていた。





「次はこっちに進んでみるか」


 ギガピッグを食してから、しばらく。


 僕たちは慎重に進みながら、夜を過ごせる場所を探していた。

 深い茂みの中だと、周囲を警戒しにくいと考えたからだ。


 また、途中で色々と発見もあった。


「お、これも上回復草だな。それにハイルビー鉱石もある」


 魔境の森には、貴重な植生や鉱石がたくさんあるんだ。

 序盤でこの調子なら、奥へ進めばもっと珍しいものもあるかも。

 人が寄り付かないため、荒らされた様子もない。


 ただ、これだけ数が多いと運ぶのは大変だ。

 そう思っていると、またもスライム達が助けてくれた。


『じゃあ持っていようかー?』

『また合体するー?』

「うん、お願い!」


 スキルにあった【スライム収納】。

 これを使えば、スライムが代わりに持ってくれる。

 さらに、【スライム合体】で一つになることで、容量は大きくなる。


「何度も聞くけど、苦しくない?」

『ぜんぜーん! まだまだよゆー!』


 容量に関しても、この通りだそう。

 さっき聞いた話だと、自分でもどこに収納しているか分からないとか。

 それでも、取り出す時は正確に取り出せた。


 これもスキルの影響なのかな。

 とにかく便利なのはありがたいことだ。

 

 そうして歩いている内に、ステータスにも変化があった。


ーーーーー

アケア

MP :1210/1430


ギフト:スライムテイム(130)

スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】

魔法 :火魔法

ーーーーー


「MPの上がり方がすごいな……」


 スライムの数は、ちょくちょく増えて百三十匹。

 スライムにも個体差があるらしいけど、平均すると一匹10MPぐらいだろう。

 また、ギガピッグの後にも何匹か森の魔物を倒したので、経験値でMPが上がっている。


 このままいくとどうなってしまうのか。

 他人や他ギフトがどれぐらいかは知らないけど、ワクワクしていた。


 と、ステータスを眺めていると、周囲を警戒するスライムから念話が入る。


『アケア! ぼくの方から魔物がきてる!』

「了解! まっすぐこっちに戻ってきて!」

『うんー!』


 念話の方向から、北東だ。

 そのスライムが帰ってきたのを確認し、魔法を放つ。

 

「【業火球】!」


 スライムの【火球】百個分の魔法だ。

 道中と同程度の魔物なら、これで一撃のはず。


「やったか?」

「ウオオオオオオン!」

「……!」


 しかし、魔物は煙を振り払うと、獰猛どうもうな声を上げた。


 【業火球】が効かないなんて!

 少し戸惑うも、その姿があらわになって納得する。


「炎を帯びている!? まさか耐性を持っているのか!」

「ウオオオオオオン!」


 現れた魔物は、炎をまとったオオカミだ。

 見るからに火魔法は効きそうにない。


『やばいよー!』

『どうするのアケアー!』

「くっ!」


 業火球はすごい威力だが、効かければ意味がない。

 後退気味に戦線を維持するが、これではジリ貧だ。


 どうする──と思っていた時、後方より念話が聞こえてきた。


『ぼくたちの魔法なら効くかも!』

「君達は!?」


 そこにいたのは、大まかには同じスライム。

 だが、今までのスライムより水分を帯びている・・・・・・・・ようだった。

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