第41話 もう一度固める決意

 『どうか我々と協力して、魔族を倒してくれぬか』


 スライム地下帝国のおさ、賢者スライムが頭を下げた。

 原住スライム達も魔族には困っているようだ。

 対して、アケアの答えは決まっている。


「もちろんです」

『ほ、本当か……!』

「はい。元々そのつもりで来ましたから」


 今回の目的は、“魔族の王”の復活阻止と、原住スライムの救出。

 その内、後者は達成された。

 彼らも協力してくれると言うなら、アケアも好都合だ。


「僕はスライムテイマーです。ここにいる子達もみんなテイムしてる。お互いに協力し合ってます」

『そうであったか!』

「だから、良ければテイムされてくれませんか」

『良かろう!』


 賢者スライムはぴょんぴょんと跳ねる。

 話を聞いていた原住スライム達も同様だ。


「ところで、ここには何匹のスライムがいるんでしょうか?」

『約600匹じゃな』

「すごい……!」


 さすがは帝国を名乗るほどの拠点だ。

 アケアは早速、手をかざした。


「じゃあみんな、ここに集まって!」

『『『うんー!』』』


 光に当てられ、原住スライム達のテイムが完了する。

 アケアはそのままステータスを確認した。


ーーーーー

アケア

MP :72900/87900

ギフト:スライムテイム(1999)

スキル:スライム便利系 スライム強化系 スライム戦闘系

魔法 :火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 雷魔法 氷魔法 光魔法 闇魔法 基本魔法 特殊魔法 治癒魔法 強化魔法 古代魔法(←New!)

ーーーーー


 早速ステータスに変化が現れている。


 まず、原住スライムは578匹だったようだ。

 キリは悪いが、テイム数は1999匹になっている。

 それにより、MPが57800上昇していた。


 次に、古代魔法というものだ。


(古代魔法ってフィルが言ってたやつか……)


 フィルがテイムしたシロロンは、フェンリルだった。

 古代からの血を受け継ぐからか、覚醒した時に“古代魔法”が還元されたらしい。

 

 それと同じく、原住スライムも昔から存在している魔物だ。

 大量にテイムしたことでアケアにも還元されたのだろう。


 すると、原住スライム達も次々に跳ね始めた。


『なんだか力が湧いてくるね!』

『体がポカポカする!』

『強くなった気分! むきっ!』


 テイムの恩恵を感じ始めたのだろう。

 だが、賢者スライムは少し寂しげな顔を浮かべた。


『あいつもテイムされてほしかったじゃろうな……』

「え、あいつって?」

『すまぬ。ここにはもう一匹いたんじゃ』


 賢者スライムは見上げながら言葉にした。


『名前は“王子スライム”。我らの中でも一際強くてのう。一度魔族と遭遇した時、我らを逃がすために一人で囮になってくれたんじゃ』

「そんな子が……」


 スライムが魔族に一匹で立ち向かうなど、無謀むぼうにも程がある。

 よっぽど勇敢だったのだろう。


『もう何年も前の話じゃ。今はもう生きてすら……』

「いるよ」

『……!?』


 だが、ふとアケアが答えた。


『アケア殿、それは本当か!?』

「うん。これで感じるんだ」

 

 アケアは目の前に、コンパスのような紋章を浮かべている。

 先ほど会得した“古代魔法”の一つだ。

 名前は【お友達探しスライムサーチ】。


「一匹だけ、北に反応がある。これがその王子スライムじゃないかな」

『北……魔族たちの方角じゃ!』

「じゃあ決まりだね」


 仲間も増えたところで、アケアは再度決意を固めた。

 

「魔族の本拠地へ乗り込む」

『『『うおおー!』』』


 しかし、今度は長老スライムが声を上げる。


『じゃがアケア、しょうはどうするんじゃ!』

「確かに今のままでは勝てない。でも考えなしではないよ」


 アケアは古代魔法の一覧を開き、賢者スライムに確認する。


「賢者スライムさん、これはあてにしていいよね?」

『うむ。もちろんじゃ』

 

 対して、賢者スライムは強くうなずいた。

 古代魔法の中に、瘴気を攻略するヒントがあったのだろう。


『我ら原住スライムの神髄しんずいをお見せしようぞ』





 一方その頃、魔族たちの拠点。


「おいおい、本当にやっちまったのかよ」


 男の魔族が口を開く。

 視線を向けたのは、帰ってきたハーティアだ。


「うふっ。だって手応えなかったんだもん」

「にしても、やりすぎだバカが。手加減ってものを知らねえのか」

「知ってるわよ。見逃したあげたんだもん」

「そうなのか?」


 ハーティアは口元に手を当てて答える。


「多分ね。あれぐらいじゃくたばらないわ」

「そうかよ、ならいいが……」


 すると、男の魔族は横に目を移す。

 そこには、カプセルに閉じ込められているスライムがいた。

 この子が“王子スライム”だ。


「で、こいつは何なんだよ」

『出せー!』


 だが、王子スライムを捕まえた意図は、ハーティアも知らない。 


「さあね。でも【スライムテイム】には重要みたいよ?」

「ほーん。そういうことか」


 そうして、男の魔族はニヤリと笑みを浮かべた。


「じゃあ次は俺が出るぜ、ハーティア」

「好きにしたら」

「ああ」


 男の魔族が放つオーラは、ハーティアよりも凄まじい。


「侯爵級魔族の俺がな」

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魔境の森に捨てられたけど、最強のテイマーになって生還した~外れギフト【スライムテイム】はスライムを“無限に”テイムできるぶっ壊れチートみたいです~ むらくも航 @gekiotiwking

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