第4話 盾の乙女
ノアールに似たモノ。
ラサンティスの村で人を襲っている魔物がそれなら、人の手には余る存在だろう。しかし、わたしはノアールにも関わって欲しくない。
「面倒なことになるなら、このまま引き返そうよ」
ノアールは少し驚いたような顔で、わたしの方を見る……そして微笑んだ。
「ラゲルナ様は、
わたしに向けられたのは、先ほどまでの3人に向けた笑顔とは別の、ずっと柔らかい笑顔だった。
「ち、違うよ。わたし達は魔物討伐の依頼を受けて来たわけじゃない、報酬なしで余計な面倒事に巻き込まれたくないだけさ」
急に恥ずかしくなって、思わず支離滅裂な否定をしてしまう。
「大丈夫です。争うことになっても、妾は負けません」
そう言って、ノアールはカイルが置いていった荷物を背中に担ぐ。華奢に見える身体で、人一人分の重さの荷物を軽々と運ぶ……傍からは魔法にしか見えないか。
魔物に住人が襲われている村と言うから、陰鬱な雰囲気を予想していた。しかし、このラサンティスの村は違った。村の規模の割りに、人が多く賑わっている。
そう言えば、村の側を街道が整備されたおかげで商人たちが中継地点として利用しているとカイル達が言っていたっけ。
村人らしい若い男に「村長と話をしたい」と告げると、どう言うわけか飯屋の二階に案内されて、大きめの部屋に通された。
部屋の中にいたのはカイル達3人だ。
「村長に会いに来たんだけどね」
「オレ達も、これから村長のところへ行くところさ。だから、一緒に行こうと思って待ってたんだよ」
カイルが何を言っているのか、意味がわからない。弓使いのルイスが近づいてきて「申し訳ない」と頭を下げた。
カイルは、わたしとノアールもパーティのメンバーだと言って、この飯屋の二階にわたし達の分の部屋も押さえてあると言う。
「わたし達は木樵小屋の礼をしたら、直ぐに村を出るつもりだよ」
わたしはカイルの申し出を断る。大体、カイル達が所属しているギルドにわたしは登録していない。わたし達がパーティのメンバーになれるはずがない。
「オレ達でアンタを雇う。それなりの報酬も払う。盾の乙女のラゲルナを安く雇えるとは思ってねえよ」
ほう、わたしのことを知っていたのか?
「オーレンは元傭兵なんだ。レイドリク伯のところを飛び出して、女魔法使いと旅に出た『盾の乙女』の噂を知ってたぜ」
ああ、そうか。それで先ほどはノアールを魔法使いと言ったのか。
元傭兵なら、盾の乙女だった頃のわたしを知っていても不思議はない。
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