第11話 花の冠
ノアールは上機嫌だ。
地面から浮き出した木の根っこやゴツゴツした石で、足場は酷く悪い。にも拘わらず、踊るような足取りで山道を進んでいる。もしもノアールが、何かの歌を知っていたなら歌っていたかも知れない。
わたしは、あれから例の魔物の討伐を依頼した商人と掛け合って「森に住み着いた魔物の討伐」を正式な仕事として受けてきた。霊木の、薄まった魔力で不満だったノアールは、今度こそ濃い魔力を喰らえると期待しているのだろう。
しかし。
そんなノアールと対照的に、息を切らせているのがサリアと言う名の女弓使い。足下もフラついて危なっかしい。
「おい、ノアールって言ったか? 少しは他の者に気を遣え!」
ドンドン先を行くノアールに、抗議したのはレイバーだ。名前を呼ばれて振り返ったノアールは、露骨に不愉快な顔をする。
「
「……」
その通りである。一旦はお流れになった依頼。商人から直接の依頼として受けたのは、わたしとノアール。そこに「最初に依頼を受けたのは自分達だ」と横やりを入れてきたのがレイバー達3人。
挙げ句に「報酬は要らないからついて行く」と言い出した。わたし達がレージェの弓を隠していると思い込んでいるレイバーは、この魔物狩りで「レージェの弓が使われるに違いない」と思っているのだろう。
レイバーとアデルの2人は、わたし達に普通について来ている。それなりに鍛えているし山道にも慣れているようだ。しかし、あまり身体を鍛えていないらしいサリアは早々にバテてしまった。
山道だから、高低差のきつい場所もある。万一、足を踏み外したら……とレイバーは心配しているようだ。
「おい、あんたからも言ってくれよ」
言うことを利かないノアールを諦めて、わたしの方へ懇願するレイバー。
「ノアール、綺麗な花があるよ」
「お花ですか?」
少し怪訝な様子で、ノアールは振り返った。
「ああ、この花はね」
山道の脇に生えている、その花を数本茎から千切る。そして茎を編み込んで見せた。
「あら?」
「こうやって何本もの花の茎を編み込むと、花で冠を作れるんだよ」
「お花の冠ですか? 素敵です!」
「花も沢山あるから作れそうだね。作ってあげるよ」
「はい! ありがとうございます」
レイバーをチラリと見た。レイバーはバツが悪そうに目を伏せて、サリアに水を渡しに向かう。
わたしが、ノアールに花の冠を作る間の休憩時間だ。
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