盾の乙女、異形と共に冒険者になる

星羽昴

第1話 腕試し?

 相手は三人。剣と弓が一人ずつ、あと一人は魔法使いか。


「じゃあ、アンタの腕前を見せて貰おうか」


 リーダー格の剣使いの声を合図に、他の二人が身構える。

 いや、そう言う面倒くさい仕事ならお断りなのだけれど。しかし、聞き入れて貰える雰囲気ではなさそうだ。



 なぜ、こうなったか。

 わたしの名前はラゲルナ。女ながら腕に覚えがあるので戦士を自称している。相棒、と言うか道連れの名前はノアール。見た目だけなら絶世の美女と言って良いだろう。

 見た目だけなら。

 わたしとノアールは、ある商人の荷馬車を護衛する仕事でこの街にやって来た。道中で荷物を狙った野盗を撃退したら、その剣の腕を見込まれた。


「大した剣の腕じゃないか。それならもう一仕事頼みたい」


 どんな仕事か、と問うと「魔物の討伐」だと言う。そう聞いて、相棒のノアールがをしながら興味を持つ。


「北のホーレイ山のふもとにある森に、魔物が住みついたんだ。結構、強力な奴で街の自警団も手を焼いてる」


 そう言われて、ここに来たらこの展開。



 魔物討伐を依頼されたのは、わたし達だけではなかった。この街では名の知れた3人組の冒険者パーティも依頼を受けていた。

 そして「足手まといにならない程度に腕があるかを試させて貰う」と言い出した。


「行くぜ」


 剣使いは、ロングソードを上段に構えた。それからワザと大振りに剣を持ち上げてから、わたしの脳天めがけて振り下ろす。

 する気だ。

 それがわかったので、わたしは剣使いを無視して後ろを向いてしまう。

 そのまま「はい、さよなら」のつもりだった。「怖じ気づいた」と言われようが、余所者のわたしには関係ない。

 しかし。

 わたしを護ろうとするノアールが、わたしと剣使いの間に割って入ってしまう。


「お前、魔法使いか?」


 突然、目の前に現れたノアールに困惑する剣使い。

 やばい、そう直感したわたしはノアールに念を押す。


「ノアール。新調した服をキズ付けないようにね」


「はい。わかりました」


 これで、お気に入りの服を痛めない程度には手加減するはずだ。


「では。ちょっと世界を歪めて、空間の繋がりを捻って置きますね」


 剣使いは、ノアールが何を言っているかわからないようだ。剣使いだけではない、他の二人も。


わたしの周りを別の空間に繋げました。不用意に剣を振り回すと、何を傷付けるかわかりませんよ」


 だが、剣使いは大人しくしてくれなかった。ノアールの右肩に向かって剣を振り下ろす。


「ぎゃあ!」


 剣使いの、左後方にいた魔法使いが肩口から血を吹き出していた。

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