第7話 火の呪具
男の視線と指さす先にいるのは、ゴルザーンだ。
ゴルザーンは、寝台に跪いたわたしの背後に立っていた。背負った大剣を抜き、右手に握っている。他の2人も、抜き身のロングソードを構えていた。
ここで問いかけるのは、時間の無駄だな。
この男を襲ったのは、自称・冒険者の『三頭の
「そいつはゼークトの街の商人でな。商売物の仕入れにホルスの街へ向かうところだったんだ。付き合いのある両替商がホルスの街にはないってことで、仕入れのために大金を持っての移動に、ラサンティスの村へ向かうオレ達が護衛をやってやったのよ」
それで頃合いを見計らい、殺して金を奪う算段だったか。
殺したつもりの商人が、瀕死の身体を引きずってここまで来るのは想像していなかったのだろう。
「ペラペラと自分らの悪事を喋るってことは、わたしもこの男も殺して口を封じるつもりだね」
ゴルザーンは、大剣を肩に担ぐとニヤリと笑った。
「いやいや。この際、オレ達の仲間にならねえか? 魚と鳥を貰った礼もしないとならないからな。分け前は弾むぜ」
「最初に言っておくけど、わたしは安い金では動かないよ」
「おお、わかってるさ」
その言葉が終わらないうちに、わたしの脳天目がけてゴルザーンの大剣が振り下ろされた。
わかりきったことだ。
わたしは、寝台を蹴る反動を利用して床を転がりゴルザーンの振り下ろした大剣を避ける。
ザンのロングソードが、わたしに向かって突き出される。その刃に向かって
バキン!
ロングソードは、あっさりとへし折れた。ザンは呆けた顔で、わたしと折れてしまった自分のロングソードと見比べている。
視界の片隅に、ゴルザーンが右手に何かを握るのが映った。わたしの背中で、悪寒が走る。ザンの胸座を掴んで、ザンの背中をゴルザーンに向けた。
ゴォォォーン
「ぎゃあああ!」
爆音の後に、ザンの悲鳴が小屋に響いた。
落雷の音? 最初はそう思ったが違う。爆音は、小屋の中で起こり、わたしの顔を熱風が撫でた。肉と脂の焼ける強烈な臭いが鼻につく。
ザンの背中は焼け焦げて、身体の芯の辺りまで消し炭になっていた。当然、もう息はしていない。
ゴルザーンが右手に持っているのは、さっき火を熾した呪具だ。大人の手首くらいの円い筒で、長さも肘から先くらいだろう。あの、筒から炎の玉を打ち出せるようだ。
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