第19話 冒険者
わたしの
「そんな
腕は立つが経験不足の坊やには、これが鈍らに見えるか。確かに、刃も切っ先も鋭くはないな。だが、北の果ての
今回は、わたしの方から仕掛けよう。最初の腕試しに、レイバーが打ち込んだのと同じ軌道で脳天を狙う。
レイバーは、両手で握ったロングソードを頭上で横にした。
バキン!
予備の剣であるショートソードを引き抜きながら、
わたしは
「ノアール。喰らっていいよ」
わたしは、左腕を伸ばして、レイバーの後ろにいたサリアを指差した。
「はい」
にっこりと笑って返事をしたノアールの左脚から、蛇の頭の触手がサリアの方へ伸びて行く。
「させるかよ!」
ノアールへ向かおうとするレイバーの前に、わたしが立ち塞がった。
「約束したはずだよ。見て見ぬふりができないなら、3人を片付けて口を封じる、と。あんたの順番は最後だ。仲間が喰われていく様を、その目で見てから逝きな」
「てめぇ!」
ショートソードを左後方に引いて、腰をひねるレイバー。横薙ぎに剣を振るうつもりだったろうが、右脚が踏み込んでくる前に、わたしの方から踏み込んでやった。互いの身体が近すぎる。これでは、斬撃に遠心力が乗せられない。
「!」
ショートソードが、レイバーの手から離れて地面に落ちた。
「……くっ!」
地面に落ちたショートソードの刃を、わたしの足が踏みつけた。怒りに燃えたレイバーの眸がわたしに向く。
「……ヒィィ」
ノアールの蛇が、サリアの足に届いていた。大口を開けて牙を光らせる4体の蛇の頭に、サリアは声にならない悲鳴を漏らした。
ノアールの4体の蛇が、サリアの顔の前で牙を剥く。
「待ってくれ!」
レイバーが悲鳴のような声を上げた。
「俺は冒険者を辞める。ここであったことは誰にも喋らない。だから……サリアを助けてくれ」
ノアールの蛇は、サリアを通り過ぎてアデルに向かった。
「待て、アデルも助けて……」
蛇はアデルの右腕に巻き付いた。そして、右手にあった霊木の短剣に噛み付いた。
霊木の短剣が、黒い砂になり消える。
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