第20話 もう一つの依頼、それから旅立ち

 レイバーが、森の魔物征伐について来ると言い出した時に、実はが持ち込まれた。

 依頼の内容は「レイバーに冒険者を辞めさせる」こと。依頼人は、レイバーのパーティにいる魔法使いのアデル。報酬は、アデルが持っていた短剣で手をうった。


「サリアの体力では、強力な魔物を相手にするような戦いは無理なんです。一方で、僕たち3人パーティは過度に評価されてしまい、報酬は高いけど危険な仕事が増えてきました。レイバーは、いい奴なんだけど調子に乗りやすいから、おだてられると危険な仕事でも気安く受けてしまうんです」


 ああ、何となくわかる。


「サリアは、かなり無理してます。レイバーにそれを言っても『イザとなれば俺が守る』と言って聞かない。レイバーも、実はわかっているんです。だから『レージェの弓さえあれば』と固執するんです」


 アデルは、レージェの弓に寿命が迫っていたのも知っていた。サリアの兄サリオンに手を貸していたと言うから、当然かも知れない。

 無理矢理に魔弓の寿命を延ばすために、自分の短剣から魔力を流し込んで延命させていたそうだ。


「レージェの弓が待つ魔力の痕跡を、お二人と戦った場所で感じたんです。だから、あの後で寿命で枯れてしまったと思ってます」


 ……まあ、あそこで食べたからな。

 しかし、レイバーは納得しなかった。


「隠しているに違いない……と譲らなかったんです」


 アデルは、レイバーに「サリアを守りきれない」現実を突き付けるしかないと判断した。



 ノアールの食事が済んだので、わたし達は街を発つことにする。それを聞きつけたアデルが見送りに来た。


「レイバーは、街の自警団に入りました。サリアはレイバーの家に押しかけて……いろいろと尻を叩いているようです」


 レイバーが、冒険者であるよりサリアを選んだことで二人の距離は一気に縮まったと、アデルは笑いながら報告してくれた。街の住人達からも冷やかされながら祝福されているそうだ。

 ふと、サリアを一番心配していたのはアデルだったのではないか……と思えた。

 まあ、アデルが何を考えていたにしろ、それも関係ないことだ。


「いや……まさが、短剣を食べられてしまうとは思いませんでした」


 苦々しく笑いながら、サリアから預かってきたと言う包みを、わたしの前に差し出した。


「あれでサリアは料理上手なんです。本当は、レイバーの家で手料理をご馳走したいそうですが、まだレイバーがヘソを曲げてるんです。旅の途中で食べて下さい」


 一人で弁当2つはキツいな……と思いつつ、有り難く頂くことにする。


Ep 魔弓 ー終ー

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