第8話 つきまとい
それから、わたしとノアールはレイバーに付き
隣町に届け物をする仕事を受けたら、馬車で追いかけて来て「乗っていけ」と言う。教会の草むしりの仕事を受けたら、鎌を持参して一緒に草を刈る。
仕事を終えて、冒険者ギルドへ報告に行くまでいつも付いてくるのだ。
「あんたら、どうして雑用の仕事ばかり受けるんだ?」
不思議そうな顔で訊いてきた。冒険者ギルドには、金持ちの護衛や賞金首の探索とか危険だが金になる仕事も結構ある。
「俺が言うのも何だが……あんたらは、凄く腕は立つじゃないか。もっと割がよくて稼げる仕事もあるのに、何でそう言う仕事を選ばないんだ?」
「腕試しとか言って、いきなり剣で斬り付けられるのはイヤだからだよ」
皮肉を言ってやった。いや、皮肉ではない……本当に、そう言うのがイヤなのだ。ほんの少し、手元が狂えば他人を殺しかねない。
気安くやっていいことではない。
「それは謝るよ。だから、もう一度話を聞いてくれ」
わたしが不機嫌になり、返事を期待できなくなったと察したレイバーは渋い顔をして冒険者ギルドの建物を出て行った。
仕事を終えたことを報告して、入口で待っているとノアールと宿へ戻ろうとするとギルドの職員に声を掛けられた。
かなり年配の方で、元は冒険者だったとか。レイバーを駆け出しの頃から知っているのだと言う。
「言葉足らずで口が悪いが、アイツは悪い奴ではないんだ。何とか機嫌を直して、奴の話を聞いてやってくれないか」
わたしは建物の奥の部屋へ通された。そこで、その年配の職員から、例の魔物討伐の裏事情とやらを教えられる。
「あれはレイバー達3人が受けた仕事だったんだ。元々の依頼人は、あんたらに声を掛けた商人だよ。その依頼人が、あんたらの腕を見込んだとかで、急にねじ込んできたんだ」
北の森に魔物が居着いてしまったせいで、北の町へ行くのに遠回りをしないといけなくなったと言っていた。商人にとっては時間も大事だ。
依頼人にすれば、腕の立つ者が協力して当たってくれれば魔物討伐が、確実になると思ったに違いない。
「レイバーは、ああ見えて優しい奴なんだよ。危険な仕事に他人を巻き込みたくなかったんだ。実力の差を見せつけて、あんたらが仕事を降りてくれたら、怪我人を出さないで済むと思ったんだ」
確かに、レイバーは本気で斬り掛かってきたわけではない。わたしにもノアールにも、最初は寸止めするつもりだった。
ノアールに空間を歪められたせいで、どうにもならなくなり本気になったが。
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