第6話 残念な報告?

 重苦しい雰囲気の中、先乗り組で年配の方の魔法使いが口を開いた。


「更に、残酷な報告をしないといけない。ゼークトの街のギルドから派遣された3人組の冒険者が、既に魔物に殺されていた」


 村長と自警団の2人はうつむき、カイル達3人は驚愕の表情で顔を上げた。


「その3人は、村からは少し離れた森の中で死体が見つかった。村を目指しての移動中に魔物に遭遇してしまったと考えられる。途轍もない怪力で背骨が引き抜かれたもの、全身がグチャグチャに捻られたもの……いずれも人のできることではない」


 ……ゼークトの街のギルド。

 ……村からは少し離れた森。

 あれ?


「火の魔法には定評のある冒険者パーティだった」


 考えるのは止めよう。どうせ、木樵小屋を使わせて貰った礼をしたら、この村を出るのだから。


「我々も、その二の舞にならないように気を引き締めておかないとならない。わかっているのか、カイル!」


「え、オレ?」


「女の尻を追いかけてる余裕はない、ってことだ!」


 それから年配の魔法使いは、わたし達の方をチラリと見た。そしてまたカイルに視線を移して「この、女好き野郎が!」と毒づいた。

 カイルは「何でオレが」と困惑しているが、他の2人は声を出して笑う。向かいの席にいる村長や自警団の2人も、思わず吹き出していた。

 それで会合はお開きとなる。場の雰囲気を軽くしてから会合を締めくくったのは、年の功と言うべきか。



 カイル達5人が飯屋の二階に戻った後で、わたしは村長に木樵小屋で雨宿りをさせて貰ったことを伝え、壊した扉と血で汚した寝台の謝罪にと銀貨数枚を渡した。

 村長は「これでは貰いすぎだ」と遠慮していたが、村長の家に一晩泊めて貰う宿代相当と言うことでお互い納得する。



 村長夫婦とその子供2人の4人家族とともに夕食を頂いた。先ほどの自警団の1人は村長の息子で妹もいる2人兄妹。奥さんと妹さんは、先乗り組の忠告で「女癖の悪い冒険者の目に触れない」ように家の奥で隠れていた。


「この娘……ノアールがカイルと言う男に目を付けられているんです。飯屋の2階に、わたし達の部屋も用意したと言われたんですが、あんな男の隣の部屋なんて恐くて泊まれません」


 折角だから、わたしも話を合わせて置く。奥さんや妹さんより、村長と息子さんの方が同情してくれた。

 奥さん手製のライ麦パンがとても美味しかった。人のフリをするため、今回はノアールも一緒に食べたのだが……ノアールには味覚がない。

 その点は、すこし可哀想な気もした。

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