第3話 薬草採取
魔物討伐の仕事は、お流れとなってしまう。あの3人が主軸の請負人で、わたし達は補助役だったらしい。その主軸が負傷してしまったのだから、流れるのは仕方ない。
「久しぶりの御馳走と思い、楽しみにしてましたのに」
ノアールは不満気だ。霊木に貯まった魔を喰らったじゃないか……と言ったら。
「あの程度では埋め合わせできません!」
この、見た目だけ絶世の美女は、魔を喰らう存在だ。ノアール自身も魔物なのかも知れないし、全く別のモノかも知れない。
やることがなくなったので、わたし達は街の冒険者ギルドへ行くことにした。しばらくこの街に滞在するので、小銭でも稼げればそれに越したことはない。
わたしは、ある地方領主のところで護衛役をしていた経緯があり、その領主様から推薦状を貰っている。身元の保証が確保されたので、直ぐに登録して貰えた。
しかし、ノアールはそうはいかない。当面、わたしの助手と言うことで、わたしが身元の引受人になった。
そもそも人間でもないし、生きモノかどうかも分からない存在に身元引受人もないのだが。
ちょうど地元の教会から、薬草採取に行く神官助手の護衛役の仕事があった。森に入って薬草を探す神官助手を、獣や野盗や魔物から守る役目だ。報酬も安いが、わたしにはちょうどいい。
「いやあ、助手の方は医療の心得とかある方なのですか?」
教会の神官助手が驚いていた。ノアールは、草木の性質に詳しいのだ。薬草の知識もある。わたしも怪我に効く薬草に関しては多少の知識はあったが、この土地の草木は良くわからない。ノアールは、どこの土地の草木にも詳しい。
「何十年も色々な森を彷徨ってましたから、生活の知恵ですよ」
変わった冗談を言う人だと、神官助手は面白がっていた。そうだな……本当は何百年だろうから、相当に年齢をサバ読んだ冗談だ。
仕事が一段落して、持ち込んだ食料で食事にする。対して空腹ではなかったが、帰りの荷物を減らす都合もある。薬草探しに役に立たなかった、わたしがする唯一の仕事が火起こしだった。
腸詰め肉を炙っていると、背後に人の気配を感じた。振り返ると、そこには先日の剣使いが立っていた。
戦いの続きも意趣返しも面倒なので、わたしは剣使いを見なかったことにする。
「おい!」
わたしに声を掛けているのはわかるが、聞こえないフリをした。
「おお、レイバー様ではありませんか」
そう言えば、この街では有名な冒険者だったっけ。教会の神官助手が名前を呼んだので、彼の名前が「レイバー」だと知る。
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