第2話 魔法使い?
ノアールは右半身を覆うマントの付いた緑の服を着て、わたしの傍を歩いている。見た目だけは絶世の美女である。
カイルの視線に気付いたノアールは、カイルに笑顔を向けた。
わたしの「美人はニコニコしてればいい」との言いつけを守っているのだ。後ろを歩いている2人に対しても、振り返って小さく頭を下げた。
「その荷物、持ってやるよ」
わたしとノアールの旅では、荷物持ちはノアールの役目だ。わたしが
ノアールが背中に背負った荷物を、カイルが奪うようにして背負う。
「……!」
わたしの武具も入っているから、実は相当の重さだ。荷物を取り戻そうとするノアールに「放っておけ」と耳打ちした。
ノアールの荷物を背負ったカイルは、歩みが極端に遅くなり、いつの間にか最後尾を歩いていた。
「おい、正直に言えよ。いつもは荷物を軽くする魔法とか使ってるんだろう?」
「そんなモノはないよ」
荷物の重さに弱音を吐いているカイル。それでも荷物をノアールに返さず運んでいるのは、意地なのか見栄なのか。
「あれは、何が入った荷物なんですか?」
弓使いのルイスが訊いてきた。もう一人の剣使いであるオーレンも気になるようで、話に聞き耳を立てる。
「あの娘……ノアールの着替えだよ。わたしのも入ってるけど」
わたしは笑って答えた。ノアールの黒のローブとわたしの下着が入っている。わたしの
わたしのも……で、武具が入っているのを2人も察したようだ。合点がいったと首肯してから、クスクスと笑いながらカイルを見る。
「こちらの方は、魔法使いなのですね」
何故かルイスとオーレンが、ノアールを魔法使いと認定した。あれ……まさか『荷物を軽くする魔法』を信じてしまったのか?
3人は、パーティとして仕事をするのは初めてだが顔見知りではあったそうだ。先乗りしている裏方役2人がカイルと元々のチームだそうで、女好きなカイルを堅物の2人が支えているのだとか。
わたし達に声を掛けてきたのも、女の2人連れとみたかららしい。
「女にだらしがない点に目を瞑れば、いい奴なんですよ」
ルイスとオーレンは、笑いながら「カイルの性格と剣の腕」を褒めていた。
「女にだらしがないだけで迷惑だよ」
「カイルは女好きですが、女がカイルを相手にしませんから」
元の街では、女とみると口説くのが知れ渡って、女の方がカイルの相手にしなくなっていたと言う。
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