第14話 そんなわけない

一日の仕事を終えて、従業員出入り口から外へ出ると、既に香雅里さんはそこにいた。


「花蓮ちゃん!」

「ごめんなさい。お待たせしました」

「謝らないで。私が勝手に待ってたんだから」


どうやら香雅里さんひとりのようで、OFFは見当たらない。


「颯真も、昔はあんなに口が悪くなかったのよ。でも、本当は優しい人だから」


香雅里さんは歩きながらそう言った。


とてもそんな風には思えないけど?

私に対する態度は悪意に満ち満ちてる気がする。


香雅里さんについて2つほど角を曲がると、そこに大きな外車が停まっていた。


「従業員出入り口の前だと邪魔になると思ったから、ここで待っておいてもらったの」


そう言って車の前に立っている。


ドア、開けた方がいいのかな?


そんなことを思っていると、運転手が急いで降りてきて、ドアを開けた。


やっぱり、そーなるんだ……



車に乗ってから、不安になってきた。

食事って一体どこに行くんだろう……

お金足りるかな……

高級フレンチとか連れていかれたら、マナーとかわからない……



「今日ね、颯真が『中華食べたい』って言うから、中華なんだけど、花蓮ちゃん好き?」

「はい、何でも」


良かった。中華なら箸だよね?


「わがまま言う代わりに颯真の奢りだって」



まさか、わたしが困らないように、OFFが気を使ってくれた?

そんなわけないよね?



「皆さんは、どういうお知り合いなんですか?」

「柊真と颯真はわたしの幼馴染なの」

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