第25話 魔法の時間

本当に来るのかどうか疑わしかったけれど、約束の時間の前に、マンションのエントランスに立っていると、15分前にOFFの車がやって来た。


昨日はそんな余裕なかったから見ていなかったけれど、OFFの車は外車のスポーツカーだった。



「乗って」

「どこに行くんですか?」

「早く」


結局乗ってしまったのだけど、どこに行くのかも教えてもらえない。

相変わらず無言。


それでも、そっと運転するOFFを見たら、その顔はやっぱり柊真さんと同じ。




「降りろ」


そう言われて、いつの間にか寝ていたことに気がついた。


「よく知りもしない男の車で寝るとかありえない。いい年して警戒心くらい持てよ」

「ごめんなさい」

「まぁいいや」



目の前にはモノトーンの建物があって、OFFはどんどん中に入って行く。


入り口にプレートにはFULULUの文字。


何のお店だろう?


受付カウンターのようなところまで行くと、OFFに気がついた女性が頭を下げた。


「めずらしいですね、御堂さんが女性のお客様を連れて来られるなんて」

「こいつは特別」


それを聞いた女性が、わたしをじっと見つめて言った。


「確かに。初めてのタイプかも」

「マシにして。あと、簡単に教えてやって」

「わかりました。お任せください」

「どのくらい?」

「2時間くらいでしょうか」

「その頃また迎えに来る」


わたしをその場に置いてOFFは行ってしまった。


「こちらへどうぞ」


結局言われるがまま、女性について行った。

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