第17話 与えられた仕事

エレベーターを降りると、早足で「倉庫」と書かれたプレートの貼ってある大きな扉の前に連れて行かれた。


「この中を片付けて」

「ここをですか?」

「あなたがIKEDAにいる間は、これがあなたの仕事。お昼もここで食べて。みんな、あなたがいるとせっかくの休憩時間に不愉快な思いをするから」


女性は、もう一度ため息をつくと、わたしをその場に残して行ってしまった。



大きなドアには鍵がなく、開けると少し埃の匂いがした。

それに空気がどんよりとしている。

フロアの中を見渡すと、あらゆる階と店名の書かれたダンボールが乱雑に置いてある。

部屋の四隅は天井までの高い棚になっていたけれど、そこにも法則性のないまま適当に段ボールが置かれているようだった。


明日から、もっと動きやすい服を持ってこよう。

ここなら制服じゃなくても許されるよね?


バケツと棚を拭く雑巾が欲しいけど、誰に言ったらいいんだろう?

床の埃を掃くのに掃除機も借りられるかな。


売り場と違って、照明の暗い部屋の中にしゃがみ込んだ。



ここなら残業もなく定時で帰れる。

それに……

今はまだ思いつかないけど、きっと何か……いいところも見つけられるはず。

意味のない仕事なんてないんだから。

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