第13話 OFF

御堂さんには思いの外権力があったようで、わたしは早速次の日から、地下の食料品売り場に配置換えとなった。


パートのおばちゃん達に囲まれての仕事は落ち着く。

客層は老若男女様々だったけれど、ブランドものの服を扱うよりは全然わたしに合っている。



お昼の忙しい時間帯が過ぎて、一息ついたところだった。

売り場を見渡していると、御堂さんが立ってこちらを見ていた。

どっち?

見かけだけでは区別がつかない。



昨日、休憩から戻ってきた美月さんに、2人の御堂さんの話をしたら、「どっちがどっちか、わからないわよね」と言われた。



でも、顔は同じでも性格は全然違う。


彼らのことは、優しい方をON、意地悪な方をOFFと勝手に呼ぶことにした。



御堂さんはツカツカとこっちに近づいてくると言い放った。


「そっちの方がマシだな」


OFFの方だ。


「御堂さんが配属先変えるよう、口をきいてくださったんですよね? ありがとうございます」

「向上心のないやつ」


今……お礼言ったのに……


「颯真、その言い方失礼だから。謝りなさい」

「事実を言っただけだから」

「謝りなさい」

「……悪かった」

「ごめんなさいね、颯真は口が悪くて」

「香雅里さん?」

「花蓮ちゃん! どうしてここに? 社員証は池田の販売促進部だったと思ったけど?」

「昨日からこちらへ異動になったんです」

「ねぇ、次に会ったら連絡先交換する約束覚えてる?」

「はい」

「じゃあ、仕事の後一緒に食事しましょう。いいよね、颯真?」


それって、OFFも来るってこと?

それはちょっと……今だってすっごく睨まれてるんだけど……


「あの、わたし――」

「決まりね。今日は何時に終わる?」

「7時に」

「7時に従業員出入り口の前で待ってるね」

「いえ、あの――」


香雅里さんは手を振って御堂さんと行ってしまった。

途中、振り返った御堂さんの顔が怒っているように見えた。


追いかけようとしたら、お客さんに声をかけられて、そのまま横目で2人の後ろ姿を見送ることになってしまう。


香雅里さんともう一度会えたことも、ご飯に誘われたことも嬉しいけれど、OFFも一緒だと思うと……怖い。

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