第30話 おやすみなさい

マンションの前で車を降りると、なぜかOFFまで降りてきた。

そして、車のトランクから両手いっぱいの手提げ袋を取り出して、わたしに渡してきた。

alternativeのスタッフが車に入れてたやつ。


「これ?」

「プレゼント。何て言うんだっけ?」

「あ、ありがとうございます。でも、こんなに……」

「見返りが欲しい」

「え? あ? でも、わたし背が高いだけで貧弱なので……」

「バカなのか?」

「違うんですか?」

「今日、一度もオレの名前を呼ばなかったろ? 名前を呼べ」

「御堂さん」

「違う。颯真って呼べって言ったよな? それから敬語もやめろ」

「颯真……さん」

「『さん』いらないから」

「颯真」

「お休み、花蓮」


颯真は一旦車のドアに手をかけて、思い出したようにこちらを向いた。


「ゴミ箱の件、電話して聞いたらその通りだった。場所を変えることと、フタ付きのものに変えるよう指示した。ありがとう」

「いえ……おやすみなさい」

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