第4話 パウンドケーキ

きっと、いろんなことがキャパオーバーだったから。


不覚にもその日の夜、熱を出してしまい、月・火・水と3日間も会社を休むはめになった。


39度の熱が出る中をひとりで過ごし、水曜の朝になってようやく起き上がれるようになったものの、ご飯を作る気力まではわかず、お腹がすいたなぁ、と思いながらローテーブルに目をやった。


あの男から渡された手提げ袋が置きっぱなしになっている。


「食べて」と言っていたから、食べ物なんだ。


見ず知らずの人間にもらった物を食べるなんて、こんな状態だったら考えもしなかった。

でも、2日間も何も食べていなかったから、誘惑に負けて、手提げ袋の中の、きれいな包装紙に包まれた箱を開けた。


中には、パウンドケーキが入っていた。

ちゃんと密封包装されている。だから大丈夫。

袋を開けて、中身を口に入れた。

驚くほど美味しくて、一気に全部食べて、また眠りについた。

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