第51話 ばいばい

車で迎えに来てくれるという颯真を断って、パークの入り口で待ち合わせをした。


並ぶのが嫌だという颯真を無理やり引っ張って、人気のアトラクションに片っ端から乗った。

ジェットコースターでキャーキャー言った。

水に向かって落ちていく乗り物のせいで、頭から水を被った颯真が悪態をつくのを横で笑った。

2人でポップコーンを食べながら歩いた。

本当のデートみたいに。


でも、写真は一枚も撮らなかった。




最後のパレードまで見ていたら帰りの電車がいっぱいになってしまうから、その前に出口に向かった。


「明日からまた仕事がんばろー」

「なぁ、販売促進部に戻してやることができるって言ったら?」

「そんなことしなくていいよ。颯真にわたしを異動させた人達と同じことをして欲しくない」

「花蓮らしい」

「販売も楽しいよ」


出口を出たところで、颯真が立ち止まった。


「今まで、付き合わせて悪かった。もう付き合ってるフリは終わりにしよう」

「ありがとう。楽しかった思い出だけ持って帰るね」

「あのさ、花蓮」

「ここでお別れがいい。ようやく肩の荷が降りた気分」

「そっか……香雅里には、オレが浮気してフラれたって言っておくから、合わせといて」


また、自分だけ悪者になろうとして。


「ばいばい」



振り返らずに、前だけを真っすぐに見て歩いた。


ばいばい、颯真。




最初、颯真と柊真さんの区別がつかなかった。


颯真を柊真さんと勘違いして惹かれた。


でも、今は絶対に見間違えたりしない。


颯真は柊真さんとは全然違う。

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