第39話 どうかな

そのまま、流れみたいな感じで颯真の車に乗ったものの、一体何が起きたのか分からないでいた。

alternativeの副社長という肩書きは、そんなに権力があるものだったんだ。


「オレのことを利用すればいいって言ったろ? イケメンで金持ちの彼氏がいるって言ってやれば良かったのに」

「……それ、自分で言う?」

「間違ってないし。あんな男のどこが良かったわけ?」

「そうだね。どこが良かったんだろう」

「オレの方がいいだろ?」

「それは……どうかな」


颯真はわたしの返答を聞いて、おかしそうに笑った。


それを見て、わたしも笑うことができた。



「花蓮はオレのことを何も知らないよなぁ」


颯真はそう言ったけれど、十分すぎるくらいわかってる。

優次なんかより、颯真の方が、何倍も何百万倍もかっこ良くて、優しい。



そして、わたしを好きじゃないことも、知っている。




IKEDAの前まで送ってくれた颯真に、別れ際、ケーキの箱を渡した。


「わたしのせいで買えなかったでしょ? お礼」

「いいよ」

「颯真のためじゃない。香雅里さんに」

「ああ……」

「わたしも香雅里さんのこと好きだから」

「悪い」

「送ってくれてありがとう」

「うん」



颯真の車が見えなくなるまで見送った。


「香雅里さんのことになると素直だよね」


無意識につぶやいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る