第11話 ONとOFF

百貨店がオープンすると、ちらほらとお客さんがやって来たものの、全員が美月さんのところへ行くので、接客の様子を見たり、広げられた服を片付けたりした。



客足がおさまった頃、スーツ姿の男性が店に入って来た。

恋人へのプレゼントかな……


「いらっしゃいませ」


声をかけ、その顔を見て危うく声を出しそうになってしまった。


あの日、カフェで会った、失礼な男だった。


男はわたしのことなんて、すっかり忘れているようで、何も気がつくことなく、優しく微笑んだ。


「IKEDAの人?」

「小鳥遊さん、こちら朝お話した御堂さん。alternativeの社長」

「今日からこちらをお手伝いさせていただく小鳥遊と申します」

「そうなんだ。大変だと思うけど、よろしくお願いします」

「はい。頑張ります」


御堂さんはくすりと笑うと、高村さんに向き合った。


「高村さん、あそこのディスプレイなんだけど――」



alternativeの社長だったんだ。

驚きながらも、納得してしまう。

社長だから横柄な態度も、派手な格好も許されるんだ。


でも、今目の前にいるこの男は、あのカフェで会った時とは全然態度が違う。

わたしにお菓子をくれた時と同じ、優しい感じがする。


2人の様子を少し離れたところで見ながら、この御堂という人は二重人格なんだろうか? それとも、ONとOFFを使い分けるタイプ?

なんて考えていた。

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