第27話 魔法の時間3
次に連れて来られたのは、alternativeの本店らしく、IKEDAの中に入っているショップと違って2F建のビルだった。
ショーウィンドウに飾ってある洋服は女優さんが着る服みたいで、ショップの中は更に別世界だった。
OFFはまたもやどんどん中に入っていくと、わたしを放っておいて、ワンピースを見ていた。
仕事かな?
そう思って、何か見て時間を潰そうと思ったものの、手に取れるようなものがない。
店内には数人のお客さんがいたけれど、誰も値札なんか見ていない。
その中の1人が、スタッフに勧められるままトップスを数点選んで、最後まで値札を見ないまま購入していた。
「おい」
突然呼ばれてOFFの方を見ると、その手にワンピースを持っていた。
「着てこい」
「わたしですか?」
「早く」
「はいっ」
渡されたワンピースを着て、試着室を出ると、OFFはスタッフと話をしていた。
それで話が終わるのを待っていると、わたしに気がついたOFFが「これそのまま着ていくから」と行った。
着て行く?
このワンピを?
タグは?
わたしの思っていることがわかったのか、OFFは笑いながら言った。
「タグなんかついてないよ」
頭がおいつかない。
「そこ、座って、靴脱いで」
「靴ですか?」
「早く」
言われた通り、ソファに座って靴を脱いだ。
「サイズは?」
「25です」
「そんなもんか」
そう言ってどこかに行くと、今度は靴を持って戻って来た。
「履いて」
「はい」
5cmのヒール……
「立って。歩け」
「はい」
「どう?」
「歩きやすいです」
「わかった」
もういいのかな?
もう一度ソファに座って靴を脱ごうとして怒られた。
「誰が脱いでいいって言った?」
「でも、これ売り物ですよね?」
「いいんだよ」
何が?
OFFはまたスタッフと何か話始めたので、ソファに座ったまま待った。
「行くぞ」
「あ、はい」
車のところまで行くと、スタッフがたくさんの袋を車のトランクに入れていた。
「乗ってろ」
そう言われて素直に車に乗った。
しばらくしてOFFが運転席に乗ると、バッグを渡された。
「今持ってるやつの中身をこれに入れ替えて」
もう、抵抗する気も起きず、言われるまま中身を入れ替えた。
「次はどこですか?」
「食事。和食なら箸だからいけるだろ」
やっぱり……
この間、香雅里さんと柊真さんと4人で食事に行った時、OFFのわがままで中華になったと香雅里さんは言ったけれど、気を使ってくれてたんだ。
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