第6話 何があったの?

「村中さん、毎年の北海道物産展のことなんだけど」

「資料もらえたら目を通しておきます」

「あ……うん。わかった」


仲がいいと思っていた村中さんに話しかけて、冷たくあしらわれた。

先週まで普通にお菓子の交換とかしてたのに……


休んでいた間に何があったの?



自分なりにまとめていたこれまでの資料を、イベント毎にフォルダ分けし、全部ファイルサーバーに移動させた。

毎年開催されるイベントの参考になればいいけど。


恒例になったケーキフェスタに、新たに出展をお願いしようと、目星をつけていたお店のリストと、そのお店の詳細をまとめた資料は、優次にメールした。

口頭で付け加えておきたいことがあって、優次の席まで言って声をかけた。


「大垣さん、さっきメールの――」

「もう、やめてくれないか?」

「え?」

「データは全部共有フォルダに置いてもらえればいいから。わざわざ個人的なメールとか送って来ないでほしい」


何?

全然個人的なメールじゃないと思うんだけど?


でも、優次のその言葉で、社内の人が何か言いたそうにしているのはわかった。

それでも、誰も何もはっきりとは言ってくれない。



ちょっと頭を落ち着かせたくて、コーヒーでも飲もうと自販機に向かっている時に、給湯室で村中さんが誰かと話しているのが聞こえた。


「――でさ、大垣さんにまだ言い寄ってるの。小鳥遊さんには、はっきり彼女がいるから迷惑って言ってたらしいけど、全然懲りてない感じ」

「えーっ! 怖い〜。どーゆー神経してるんだろうね」

「仲良さそうに見えたのは、大垣さんが我慢してたからだってわかって、かわいそうになっちゃった」

「それでずっとペア組まされて企画やってたとか、大変だっただろうね……」

「今まで、同じ部署だからって、誰にも言わないでずと抱え込んでたとか、大垣さんいい人すぎる」



頭の中がパニックになって、自販機には行かずに、そのまま席に戻った。


わたしが、優次に言い寄ってる?


何をどうしたらいいのかわからなくなって、頭の中が真っ白になってしまった。

その時、清掃会社の深川さんが、わたしのデスクの空っぽのゴミ箱を覗きながら囁いた。


「3Fの女子トイレにおいで」

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