第22話 別世界の話

コーヒーカップを片手に席に戻ると、香雅里さんがスマホを睨みつけていた。

声をかけてもいいのか分からず、そっと椅子に座ったつもりだったけれど、気づかれてしまった。


「何かあったんですか?」


香雅里さんはため息をつくと話し始めた。


「ここにいるのがバレちゃった」

「バレたって?」

「今日、夕方からパーティがあるんだけど、行きたくないから逃げてたの。それなのに、さっき柊真から『今どこ?』ってメッセージもらって、ここで花蓮ちゃんとケーキ食べてる、って返したら、それで家にバレた」

「あ、じゃあ、出ましょうか」

「行きたくない。どうせ行ったって、にこにこ笑ってるだけで、美味しそうなデザート食べられないんだから」

「食べたらダメなんですか?」

「パーティの最中はみっともないからパクパク食べるなって、言われてる。そんなつまんないことでもすぐSNSとかで書かれちゃうから」


また別世界みたいな話。


「わたしが家からの連絡を無視してたから、柊真に居場所を探らせたのよ。今から迎えに来るって……」

「いつくらいにここへ来られるんですか?」

「近くにいるみたいで15分くらいで着くみたい」

「だったら、今すぐ出ましょう」

「行きたくなーい。花蓮ちゃんとここにいたい」

「行きますよ」


香雅里さんをひっぱって、エレベーターに向かった。

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