「人の彼女と話してる暇があったら香雅里のとこに行けよ」

「世間話も許されないわけ？」

「そうだよ。あっち行け」

颯真に言われて、柊真さんは香雅里さんを探しに行ってしまった。

「帰るぞ」

「いいの？」

「嬉しそうな顔しやがって」

「あまりにもいろんなことがありすぎて、頭がパンクしそう」

「どうせもう穴だらけだろ」

「ひどい言い方」

「足は？」

「足？」

「そんな高いヒール初めてだろ？」

「初めてなんだけど、思ってたほど歩きにくくなくて、もしかしたら走れるかもしれない」

「どこを走るんだよ。バカか？」

「バカバカ言わないで。本当にバカみたい思えてくるから」

颯真は「ふん」と、やっぱりバカにしたように笑ったけれど、その目は優しいものだった。

「送る」

「え？　お酒飲んでないの？」

「飲むわけないだろ。花蓮を送って行くのに」

当たり前のようにそんなことを言う。

わたしのことを好きでもないくせに

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