第41話 ヴァンダルグの真実
「ん?」
1番驚いているのは俺だった。
体が燃え上がっている。
今まで白い足が3本なの以外ただのカラスだったのに今や俺の体は大きく膨れ上がっていた。
膨れ上がっていた。いや、燃え上がっていた。
俺の体は白い炎そのものとなっていた。
体はウィーゲイツたちの背丈を優に超えている。
「ひぃいい! 何事ですか!?」
俺の突然の変化にウィーゲイツも驚きを隠せないようだった。
さっきまで勝ち誇って余裕綽々だっただけに良い気味だ。
「あんたなにそれ....」
リーゼリットも口をあんぐり開けている
使い魔がいきなりこんな神々しい姿になったのだから無理もない。
しかし、その後ろのシノビは冷静そのものだった。
その手に力がこもるのが分かる。
「やめろ!!!」
俺が叫ぶと体はさらに燃え上がった。
白い炎が俺の足元から広がり、あたり一面を焼き尽くす。
いや、そうではない。
白い炎は確かに広がったが、
「なに!? クソが!!!」
焼いたのはシノビだけだった。その小刀が赤熱して溶け、一瞬で形を失う。
炎に包まれたリーゼリットはまるで無傷だ。
シノビはリーゼリットから飛び退いて離脱する。
どうやら、俺はうまくやったらしい。
「なんなんだこれは」
うまくやったが、戸惑いは隠せない。
自分に何が起きたのかよく分からない。
『聞こえますか、トーマよ』
「なんだ!?」
急に耳元で声が響く。
びびる俺だが、聞き覚えがある。この世界に来る時に聞いた声。女神だった。
「俺はどうなったんだ?」
『【覚醒】したのです。女神の使いとしての【レゾンデートル】に至ったのです。今のあなたは【御使】としての真の力、【ゴッデス・リミット・オーバー】を【行使】できます』
「なんて!?」
説明が分かりづらいことこの上なかった。
なにかやたら難しい単語が強調されているような気がした。そういうのにハマってるのかな。
「つまり!?」
『ヤタガラスの【超克】に至ったあなたの炎はあなたの敵のみをことごとく焼き払い、そしてあなたの仲間を癒すでしょう』
「つまり便利な炎ってことか」
俺は自分なりに要約した。
『さぁ、トーマよ。【御使】としての【業(カルマ)】に従い【インフィニティ】の【境界】を超えるのです』
「分かったからちょっと黙ってて!」
これ以上聞いたら頭がこんがらがりそうだったので俺は叫んだ。
結構シリアスなシーンなのだから空気を読んで欲しかった。
とにかく、
「ウィーゲイツ!」
「ひぃ!!!」
俺は炎を燃え上がらせウィーゲイツに迫った。
シノビは見れば離脱したところで意識を失っていた。
もう、ウィーゲイツに助けは来ない。
「もう2度と俺たちに関わるのをやめろ!!」
「ひ、ひぃいい!! ふ、ふざけるな!! 私はこの街の最高権力者なんだぞ!! カラス風情が!!!」
「おらぁ!!」
「ぎゃあああ!!!」
俺が炎を少しウィーゲイツに当てるとウィーゲイツはもんどりうって叫び声を上げる。
良い気味だ。
「あんたどうしちゃったわけ?」
そんな俺の横にはリーゼリットが来ていた。
物珍しそうに俺を眺めている。
この神々しさを前に大して恐怖もしていない。
もうちょっと崇めてくれても良いんだがな。
「なんか分からん。でも、うまくいきそうだ」
「確かにね」
ジロリとリーゼリットはウィーゲイツを睨んだ。
「あんた、タダじゃ済まさないわよ」
「ほ、ほほほほほ! たかが冒険者の小娘風情が! この私を見下ろすな!! 私を誰だと思っている!!!」
「焼いて」
「ほいきた」
「ひぃいいいいいい!!!!」
俺の炎にのたうつウィーゲイツ。
なんかちょっと可哀想になってきたな。
「知ってること洗いざらい吐きなさい」
「だ、誰が!!!」
「トーマ」
「や、やめろ!!! くそ、クソがぁ!!! なぜ私がこんな目に!!!」
完全に形成逆転でウィーゲイツは明らかに追い詰められていた。
「そこのドラゴンもとんだ役立たずだ! この程度の連中に殺されそうになるとは! 我々の、我が一族のこれまでが! せっかく利用してうまくやってきたというのに!」
「利用? なんか含みがあるわね。どういうこと?」
「はっ!? なんのことやら...」
「トーマ」
「や、やめなさい! ふふ、はははは! そうです、この街を焼いたのは我々の一族なのです! 我々に歯向かう愚かな街の住人をドラゴンを口実にして街ごと焼いたのですよ! そして、そこから全てが始まったのです! ほほほほほ!」
ウィーゲイツは追い詰められて開き直っているようだった。
しかし、こいつの一族が街を?
なら、とんだクソ一族じゃないか。
ドラゴンを理由に街ごと燃やして、そこから再建するふりをしつつ街を拡大して。廃墟を利用して、ドラゴンを利用して、あらゆるものを利用して私服を肥やしてきたのか。
こいつらが全ての原因だったのか。
『今のどういうこと?』
「え!? ひぃいいいいいい!!!!」
気づけば後ろにいたシェザーナが起き上がっていた。
俺も仰天だった。
「もう回復したのか!?」
『違うよ、トーマの炎のおかげ』
そうか、そういえば女神のやつが俺の炎には味方を回復する効果があるとか言っていたか。
『お前たちが街を焼いたのか』
シェザーナの口からメラメラと火が漏れ出る。
「ち、近づくな!!! 近づくな!!! 化け物め!!! ははは、いひひひひ!! しかし! しかし全部知っても無駄です!!! 私には権力がある!! 逃げおおせれば!! 逃げおおせれば事実などいくらでも書き換えられる!!! ははは! 愚かな下民どもめ!!!」
なんてやつだ。
この期に及んでまだ負けを認めない。
大体、シェザーナが起きたのに逃げ切れると思っているのか。
とんでもない小悪党だ。
と、その時、
『ほほほ。そうですとも。あなたと同じように目障りな夫婦でした。だから殺してやったんですよ』
「は?」
『そうです、この街を焼いたのは我々の一族なのです! 我々に歯向かう愚かな街の住人をドラゴンを口実にして街ごと焼いたのですよ! そして、そこから全てが始まったのです! ほほほほほ!』
見ればリーゼリットの手の魔法道具から聞こえていた。
あの、音を録音するレコーダーの魔法道具。
「全部、音録ったから」
「へ、へへへへ。あはははははは。いひひひひひ! ゼシキ!!! ゼシキ!!! 助けないさい!!!!」
『そろそろ殺そうかな』
そう言ってシェザーナは巨大な口をあんぐり開けてウィーゲイツに迫った。
「ひあっ、ははは....は......」
そして、ウィーゲイツは白目を剥き、泡を吹いて気絶した。
「なんて小悪党だ。こいつのせいで全部おかしなことになってたのか」
俺は倒れたウィーゲイツを見下ろしながら言った。
街を焼いたのはこいつではないが、こいつはそれを理解しつつその恩恵に縋りついていた。
そして、様々な謀略を巡らせて、ずっと街を支配していたのか。
叩けばホコリまみれになりそうだった。
『トーマ、こいつ殺して良い?』
横からシェザーナが首を寄せて聞いてくる。
なんかやけに近いな。
「いや、こいつにはまだ吐かせた方が良い事実がたくさんあるんだろう。こいつの始末は人間がつける」
『うん、分かった。トーマが言うならそれで良いよ』
なんかやけに素直だな。
なんなんだか分からん。
やけにシェザーナはしおらしく見える。馬鹿でかいドラゴンだけど。
「で、一件落着ってわけ」
「どうやらそうなのか」
とりあえず、俺たちはウィーゲイツに勝ったらしかった。
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