第30話 ドラゴンとヴァンダルグと決戦の始まり
「やっぱりウィーゲイツのところだったの! 詰所に行ってもダンマリで、屋敷襲撃しようかって時にドラゴンが来たのよ!!」
「犯罪者にならなくて良かった!」
俺たちはすごい速度で空をぶっ飛んでいた。
これがリーゼリットの最高速度なのか。
───ガァアアアア!!!
後ろからはすごい速度でドラゴンが追いかけてくるがなんとか追い付かれないで済んでいる。
牙がよく見える。怖い。
俺を殺そうという意思がすごい。そこまで怒り狂っていたとは知らなかった。
「どうするんだ!! このまま逃げ回るのか?」
「冗談! トラップに順番にかけていくに決まってるでしょ!」
そうリーゼリットが言った瞬間だった。
通り過ぎた路地の一角、そこから巨大な火柱が吹き上がった。
青白い火柱、それはドラゴンに直撃していた。
───グガァアアア!!!
ドラゴンは苦悶の声をあげている。
効いている。俺たちの魔法は確かにドラゴンに効いている。
あのドラゴンでさえダメージを負うほどの火炎魔法が発動しているのだ。
ドラゴンはそのまま廃墟に落下していく。
すさまじい、音と共に辺りが吹き飛ぶ。
「やったか!!!」
俺たちは空中に静止してそれを見る。
「やってないわよ。こんなのがもう8回目。それでもあいつはピンピンしてるんだから」
「倒せるのか?」
「倒せるわ。少しずつでもダメージは与えてる。ダメージが入るってことは、やり続ければいつかは倒せるってこと。あいつが死ぬまで魔法をぶち込み続ける」
「設置した魔法はもうあとちょっとじゃないのか?」
「だから、あんたが来て良かったわ」
リーゼリットはついと指を振る。
途端に俺に魔力が通り、俺は眩い光と共にヤタガラスへと姿を変える。
「これで魔法をぶち込みまくる」
確かにそれはそうだ。
ひょっとしてひょっとするのか。
リーゼリットはドラゴンを倒すのか?
いや、しかし。
「でも待て。街にはウィーゲイツの刺客がいるんだ」
「刺客!?」
「あいつはドラゴンとの戦いのゴタゴタに紛れてお前ら全員殺そうとしてる」
「なんですって!?」
「邪魔になってきたから消そうって腹らしい」
「なんて奴!!」
リーゼリットはドラゴンとの戦い中よりなお表情を険しくしていた。
「それにそれだけじゃない! あいつはお前の両親を.....」
俺が言いかけた時だった。
「まずっ!!!」
巻起きる土埃、その中から青白い炎が吹き出したのだ。
リーゼリットは間一髪でそれをかわす。
「話は後! とにかく戦うわよ!」
「お、おう!! でもな....!」
「来るわ!!!」
瓦礫の中から銀のドラゴンが舞い上がる。
その碧い瞳は俺たちを睨み据えていた。
───ガァアアアア!!!
そして、再び俺たちに襲いかかってくる。
確かにこれでは落ち着いて会話どころではない。
しかし、これだけは伝えなくては。
リーゼリットの親を殺したのはウィーゲイツなのだと。
しかし、それではドラゴンはリーゼリットの仇ではなくなる。
リーゼリットが戦う意味はあるのだろうか。
「プロメテウスの加護よ!!!」
リーゼリットは凄まじい速度でぶっ飛びながら魔法を使う。
途端に後ろですさまじい爆発が巻き起こった。
───グガァアア!!!
しかし、ドラゴンは一瞬怯んだだけで、そのまま俺たちを追撃してくる。
「なんで!? 怯まない!!」
「こ、こいつは」
後ろのドラゴンの目はマジだった。
ブチギレているのか。
俺がいるからもうブチギレているのか。
いや、待てよ。
『私が殺すのは私を殺せるやつだけ』
そんなセリフを思い出した。
そうか、こいつは俺たちが自分を殺しえる存在だと認識したのか。
だから、本気で俺たちを殺そうとしているのか。
───ゴァアアアアアア!!!!
咆哮とともにドラゴンは青い炎を吹き出す。
リーゼリットは一気に急降下してそれをかわす。
廃墟の街の狭い路地に入り地面スレスレを飛んでいく。
真上にはドラゴンだ。
映画みたいなシチュエーションじゃないか。
リーゼリットは細かく路地の角を曲がり、ドラゴンをうまく撒いていく。
「なんで!? あいつ私しか狙わなくなった!」
「さっきまでは違ったのか?」
「さっきまでは街中の仲間全員を相手にしてた感じだったけど。あんたを危険と認識したのかしら」
「なるほど....」
それもあるだろうが、ドラゴンはどうしても俺を殺したいというのもあるのだろう。
大した執着心と言わざるを得ない。
「みんなは無事なのか?」
「ええ、まだ全員無事よ。軽傷で済んでる。でもあんたの言った通り、あいついつになく本気で戦ってる」
「殺意がすごいってことか」
「殺意っていうかなんかむちゃくちゃ機嫌悪いわよあいつ。八つ当たりで私たち殺そうとしてるみたい」
「そうなのか...」
リーゼリットの印象はそういう感じらしかった。言い得て妙なのかもしれない。
「リーゼリット!!!」
と、唐突に声がかけられた。
見れば通り過ぎて一瞬しか見えなかったが、確かにレナだった。
俺たちは急ブレーキで止まり、路地を一気に戻る。
やはり、そこにはレナがいた。
「断頭台の準備ができてるぞ!!」
そして、レナはそう言ったのだった。
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