第37話 神の炎
空高くまで飛び上がったドラゴン。
俺たちも急上昇してそこに駆けつける。
「そんなにヤバいのかあれは!?」
「全部私の予想でしかないけど、少なくともあそこから感じる魔力はそれくらいできておかしくない量よ!」
今もドラゴンは口の中には強く輝く赤い火球がある。
サイズはドラゴンの口に収まる程度。
多分直径1.5mほどだろうか。
人間ほどの大きさだ。今まで使ってきた業火や魔法に比べれば大きさの規模は明らかに小さい。
しかし、あの大きさにドラゴンの炎が今も凝縮され続けているとしたら確かに話は別だ。
「どうするんだ!?」
「なんとか止める!!」
俺たちはどんどん上昇を続ける。
その間にもドラゴンの口の中には炎の球が炎を溜め込んでいく。
喉の奥から噴き出る炎が全てあの火球に飲み込まれている。
なんとか止めるしかない。
しかし、
「あっつ!!」
リーゼリットは叫んだ。
ドラゴンに近づくにつれてどんどん周囲の温度が上昇していったのだ。
俺はヤタガラス状態だから炎への耐性がかなりあるようで耐えられる熱さだった。
しかし、人間のリーゼリットにはもはや耐え難いのか。
まだドラゴンまで目測100m以上はあるというのに。
しかし、リーゼリットは構わず上昇を続ける。
「おい! 大丈夫か!?」
「私だって魔法を使うんだから余波を防ぐための障壁くらい張ってるわ。もうちょっと大丈夫。せめてできるだけ近くまで!」
しかし、そうリーゼリットが言った時だった。
「おい! 服が燃えたぞ!」
「ヤバ!!」
リーゼリットは手ではたいて燃え上がった服の炎を消した。
リーゼリットの魔法障壁さえ貫通して燃え上がらせるなんて今ここは何度あるんだ。
一体どれだけの炎があの火球に溜まってるんだ。
「ちょっと、あいつも燃えてるじゃない!」
「なんだって!?」
見れば燃えているのは俺たちだけじゃない。
まさに火球を作っているドラゴン自身もウロコが溶け出し、ところどころが燃え上がっていた。
「自分まで焼くほどの炎なのか!?」
「私たちの魔法でもウロコが溶けるなんてことなかったのに。捨て身の攻撃みたいね」
あれを使ったらドラゴン自身もただでは済まないということか。
ドラゴンは、シェザーナは本当にあの一撃で全てを終わらせる気だ。
「プロメテウスの加護よ!!!」
リーゼリットはこの距離から届く魔法を必死に発動する。
しかし、
「だめだ! あの火球にかき消される!!」
ドラゴンの近くで起きた魔法の爆発は、しかし、魔力の熱波によってかき消されてしまった。
バカな、俺のヤタガラスの力の強化が入っているのに。
「まずすぎるだろ!! このままだと下のみんなも死ぬぞ!!」
「下手すれば壁も吹き飛んで外まで被害が出るわ!! どうにかしないと!!」
不味すぎる。このままだとみんな死ぬ。
「レーヴァテインの加護よ!!!」
リーゼリットの後ろに巨大な炎の剣が現れる。
そして、それは真っ直ぐにドラゴンに飛んでいった。
「1番硬いこれなら....!」
しかし、炎の剣はドラゴンの体表に当たりはしたが、その側から形を失ってしまった。
「ダメだ! もう私のどんな魔法よりあいつの体の表面の温度のほうが高くなってる!」
炎で焼く魔法が焼けなくなっている。
ドラゴンはもはや体表の温度のみで炎魔法をかき消すほどになっている。
こっちの攻撃が通じない。
ドラゴンを落とす手段がない。
と、その時だった。
俺たちの真下で魔法陣が大きく輝いた。
「レナたちだわ!」
そして、魔法陣からが地面が隆起し、大きく盛り上がり、槍のように上空のドラゴンに突き上がって来た。
対空魔法だ。
上空のドラゴンに対する手札のひとつ。
「表面をレアメタルでコーティングしてる! どうだ!」
見れば隆起した大地の槍は表面がキラキラと輝いている。
アダマンタイトやミスリルなどの耐熱性の高い希少金属でコーティングしてあるのだ。
金属の変換は触媒と魔力がバカみたいに必要で割に合わないと聞いたが今はそれどころではない。
とにかく、あの槍でドラゴンを。
「ダメか!!!!」
しかし、大地の槍はドラゴンに届く前に赤く溶けて地面に落下していった。
魔法が切れて大地の槍は崩落していく。
「どうすれば...」
下では盛大に魔法や大砲が放たれ、上空のドラゴンに向かっていく。
しかし、全てがドラゴンに届く前に燃え上がり、かき消されてしまう。
これはエルダードラゴンの最終奥義なのか。
まさしく神様みたいな攻撃だ。
攻撃そのものもまさに神の一撃だが、その準備段階でさえこれだけの絶対性を発揮している。
俺たちの攻撃の一切が通用しない。
こうしている間にもドラゴンは火球に炎を溜めていく。体表は赤熱し、ウロコは溶け落ち燃え上がっている。
この一撃を放てばドラゴンもただでは済まないだろう。
しかし、後に残るのは爆発的な炎で全てが焼き払われた焼け野原だ。
ドラゴンにとっては今どうなろうがどうでも良いのかもしれない。
そして、
「溜め終わったのか...!」
ドラゴンが動いた。
今まで首を下に向けて静止していたのに、その首を持ち上げる。
口の中には一体どれだけの炎が溜め込まれたのか分からないほどの火球。
あとはもうあれを落とすだけだ。
「クソっ!!! どうすれば」
今、ヴァンダルグの街が終わろうとしていた。
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