第15話 ヤタガラスと炎魔法
───グガァアァアアア!!!!
瓦礫の山を吹き飛ばしながら雄叫びを上げるケルベロス。
なぜだか教会を吹っ飛ばす威力になったリーゼリットの魔法。
俺はやっぱりヤタガラスになっている。
しかし、この状況がどういうことなのは分からない。
分からないが、
「プロメテウスの加護よ!!」
再びリーゼリットが魔法を使うすると。
───グギャァァアア!!
ケルベロスが叫ぶ。
なにせすさまじい爆発がケルベロスを襲ったからだ。
「うひゃあ!!」
使ったリーゼリットも小さな悲鳴を上げるほどだった。
教会を爆発させたのよりさらに大きい。
天まで火柱が上り、あたり一面が焼かれている。
「なにがどうなってるんだ!?」
「よく分からないけど、どうやらあんたを触媒にしてるせいだわ。あんたなんなのよ。今のも下級の炎魔法だけど、どう考えても普通に使う何十倍の威力になってるわよ」
「俺にも全然分からねぇよ」
何を隠そう俺が1番分かっていない。
しかし、これがヤタガラスになっている力なのだろうか。
この姿の俺は魔法の触媒になると何十倍と威力を高めるということなのだろうか。
ケルベロスの頭がまたひとつ焼かれていた。
もう頭はひとつだ。これではでかいだけのワンコロだ。
───グルァアア!!
しかし、ケルベロスの戦闘意欲は失われてはいない。
まだ俺たちを倒そうと猛々しく吠えている。
そこへ、リーゼリットが、
「エンリルの加護よ!!!」
すかさず魔法を撃つ。
今度は風の魔法。竜巻が起き、ケルベロスを襲う。
しかし、
「なんか小さいな」
「なんで? あんたを触媒にしてるのに」
発生した竜巻は確かにケルベロスにダメージを与えてはいるが、どうも爆発に比べると規模が小さすぎた。
なぜなのか分からず少し呆然とするリーゼリット。
そこへケルベロスが襲いかかる。
───グガァアアア!!!
「ぼーっとするな!!!」
甲高い音が響き、ケルベロスの顎が受け止められる。
「レナ!! さすがに生きてたわね」
「あれで死んでたら今まで100回は死んでる」
レナだった。
ちゃんと生きていた。ていうか目立った傷がない。一体どういう体の作りをしているのか。本当に人間なのか疑問を抱くレベルだ。
レナは大剣で受け止めたケルベロスの顎をそのまま弾き返した。
すごい力だ。戦士というのはみんなこうなのか。
「ケガはないのか?」
「おかげさまで。ごめん、ちょっと抜けてた」
「戦闘中に気を抜くとはらしくないぞ」
レナは大剣を構える。
リーゼリットは少しこめかみを抑えて思案していた。
「うーん、ということは」
リーゼリットは唸っている。
この状況に関して頭を巡らせているようだ。
しかし、ケルベロスはそんなリーゼリットを待ってはくれない。
「来るぞ」
レナが言うが早いか、ケルベロスがまた咆哮しながら突っ込んできた。
───グルァアアアアアア!!!!!
ケルベロスの咆哮が響く。
レナは大剣を振り上げる。
そして、リーゼリットは、
「ヨクルの加護よ!!」
魔法を使った。
発生したのは何本もの剣のようなツララ。
それはケルベロスを襲う。
「やっぱり弱い。なら、多分」
ケルベロスにダメージはあったが、構わず突っ込んでくる。
「スルトの加護よ!!!!」
途端だった。
俺の体が焼けるように暑くなる。
しかし、痛みや恐怖はない。ただ、燃え上がるような感覚に高揚さえ覚える。
そして、
────グガァアアアァアアアア!!!!!
すさまじい大きさの火球が発生した。
青い火球。
まるで小さな太陽のようなそれは辺り一面を焼いていく。
離れたところにあり建造物が燃え上がる。真下の煉瓦が赤く溶けていく。
そして、ケルベロスはその中心で焼かれていた。
火球はケルベロスをすっぽり包んでもまだ余裕があるほど大きい。
「アチチチチ!!!」
たまらずレナは前線を離脱していた。
立っているだけで焼けそうだったのだろう。
「やっぱり。どういうことかは分からないけど、あんたの魔法の強化は炎魔法にしか効かないみたいね」
「......ヤタガラスだからだ」
「ヤタガラス? この前もあんた言ってたわよね」
疑問の顔のリーゼリット。そうか、当然か。こっちの世界にはない伝説なんだろう。
「カラスの神様だよ。太陽の化身って言われてる」
「へぇ、カラスにも神様がいるんだ。太陽の化身。なるほど、道理で」
そして、火球の中でケルベロスは焼き尽くされていき、とうとう跡形もなくなってしまった。
そして、太陽のような火球は消滅した。
「か、勝っちまった」
ケルベロスはあっという間に焼却された。どうもそこそこ強そうに見えたが。
「すごいな。プラチナ級のクエストのケルベロスがこんなにあっという間に」
レナは口笛を吹いていた。
やはり、それなりの魔物だったようだ。
それだけ、俺が強化した魔法が強かったと言うことなのか。
これが俺の真のスキルだったのか。確かにこの前自分で攻撃する分にはあまりに大したことがなかった。
ブラックドックを一匹ずつ焼いたにすぎなかった。
しかし、本当の力は魔法の触媒の方だったのだ。
つまり使い魔としてのスキルが女神からもらった力だったということだ。
他人頼みのスキルというのはなんか転生したにしては爽快感に欠ける気もする。しかし、これはこれで楽しいかもしれない。
使い魔としてのスキル。炎を強化するヤタガラス。かっこいいかも。
「ふふふふ、あはははは!!!」
そして、突然笑い出したのはリーゼリットだった。
なんなんだ。なんか怖い。
「なんだよ。怖いぞ」
レナも同意見だったらしい。
「いける。いけるわこれは」
しかし、リーゼリットはお構いなしに楽しそうに言う。
「これなら、『尖塔のドラゴン』に勝てる!!! あんたが居れば勝てるわ、トーマ!!!」
リーゼリットは俺を人差し指で指さして言った。
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