第八話 旅立ち
「話、終わったね」
「うん。短かった」
集会は全員の安全が確認された後、手短に纏められたヴァルドボルグの話だけで終わった。
「んで?これからどうする?風の噂によれば、もう今期は学校おしまいだって」
人気のない学園の廊下を歩きながら、そんな会話をする。
「えぇ?授業足りてないでしょ」
「その辺は何とかするんだろ。で」
「ん?」
「行くんだろ?その...北に。折角通学期間も短くなったことだしさ」
「いいの?」
「もちろんさ。あとさ」
後ろを振り向いて、指差す。
「バレて居ないとでも思ったのか?13世様」
「おや。流石だね」
「どこから話聞いてた?さすがに気持ち悪いぜ」
「...失礼。キーアに、行くんだろ。"薬"は足りるのか?あと、道中危険じゃないかな?キーア行きは」
「過保護か!!!なんだよ、そんなこと心配される年でもねえって!!...もう、なんなんだよあんた」
「いや。君たちのことを、どこかで見た気がしてね。つい」
どこかで?
あー。
うん?
「...もしかしてあの狼人勇者と関係があるのってホント...」
「ゲフン!ゲフンゲフン!!!ではこれで本当に失礼するよ」
あーそういうことね。完全に理解したわ。
「勇者ロウと魔王ヴァルドボルグの関係性やその旅路については未だに不明瞭な部分が多いって聞くけど、実のところどうなんだろうね」
「さぁなあ」
特に視線は会わせないまま、長く続く廊下を歩く。咲きかけの桜が所狭しと咲く庭に、目線をうつした。
「ここ、今時期はあんまり人居ないよな」
「だよね。良い所なのに不思議。古いからかな?」
「そうかもな。うん...おい」
人気が二人。まさか。いやまさか...
「紅白野郎どもじゃねぇか何の用だよホントにさぁ」
句読点もつかず、漏れるように声が出てしまう。それも仕方がない、よりによって今一番会いたくないやつ。
「話は聞いた!俺たちも同行させろ」
よく見たらなんか木の上に立ってる!ねえそれ必要?高所マウント?飛べるんだぞこっちは!
「...あぁ。...えぇ!?」
白髪の方が露骨に驚いてるじゃん。え?赤髪の独断なの?それ!"視てなかった"の?
「四人パーティだ。悪くないだろ?」
「いやまぁ。パワーバランスとしてはそうかもしれないけど?良いわけねぇだろ、二人旅だぞ!なぁ、ファニー」
「うぅ、うん。そう思うよ、僕も」
ああ?なんだぁこいつ歯切れ悪いな。
「そうは言っても君たち!アタッカー不足じゃないかなぁ?キーアを乗り越えるためにはね!」
距離が開いてるから会話がうるさい!
にしても、痛いところをついてくるなぁ。
「たしかに、俺らには決定的なアタッカーが足りないが...」
「それじゃあ道中不安だろう!どうかい?一緒に行くというのは!」
「断る!!」
「はぁ!!??」
「折角俺たちだけの旅だぞ?ついてくんじゃねぇ!!」
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