第二十七話 心の叫び
「ヴァルドボルグゥウウウウウ!!!聴こえるかぁああああああ!!!!」
「聴こえるなら、返事してくださあああぁあああああああい!!!!」
「何っ...うっ...貴様ら、まさかァ...」
シルバラにつけられた戦闘による無数の細かい傷が疼く。
「ああ、そのまさかさ。攻撃によってコアに音声データが届くように、私たちは攻撃していた」
「無理やり取り出せないなら、出てきてもらえば良いのです!それが、私の作戦!どやァ」
「があぁああっ...ガキめぇ...貴様ら程度にこの私が...」
「もう!こう見えて私、16ですよ!ガキじゃないでーす」
「今だ、出ろ、ヴァルドボルグ!聴こえているはずだ、お前には!!」
もがき苦しむシルバラの体の中心に埋め込まれた輝きが、漏れる、程度ではすまない輝きへと変わる。
「グァアアアアアアアアアアア!!!!」
徐々に強さを増した光は空間を包み込み、黄色く、更に、緑色の世界を真っ白に塗り替える。
「...っ!!」
イヴとアップルの口角が、最大まで引き上がる。
光が収まり、世界が元に。
そして、そこに立っていたのは。
「お待たせ。クズ博士」
「...それは言い過ぎだろ。」
力を使い果たしたイヴは膝から崩れ落ちるように倒れて、ヴァルドボルグに微笑みかける。
「あとは任せた」
それだけで、全てが伝わる。ただヴァルドボルグは頷いて、かつての敵にウインクした。
「よう、メークン。久しぶりだな」
ウインクであしらわれたことが余程気に入らなかったのか、メークンは極限の激昂を見せる。だがその様相は、最早恐ろしさを越え笑いさえ込み上げてくる。
「ヴァルド...ボルグゥウウウウ!!!」
その胸には穴が開き、割れた岩盤のようにひび割れ、そこが、また故障を起こした映像のようにバグっている。
「死にぞこなったらしいな?ぜーんぶ、聞いてたぜ」
「貴様...まだ私の前に現れ邪魔を!!」
「悪いけど、急いでいるのでね。さっさと済ませる」
「舐めるなぁ!!今度こそ貴様を殺し、私が...」
一瞬にしてメークンは細切れになり、無念の言葉を吐く暇もなく消滅する。
「悪いな。大好きな奴が待ってるんだ」
ヴァルドボルグはイヴたちが事前に設定しておいたゲートを使って、意識を少しずつ現実に転送する。
「じゃあな」
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「あは...あはははは!!あは!!!心臓が止まってるじゃないの!!勇者ロウ」
「そんな......まさか......」
ロウはぐちゃぐちゃになった体で、まだなおしがみいついている。だが今それを、ヴァルドボルグは足蹴にした。
「奇跡も何も無い。ま、相討ちにはならなかったけど、感染弱体効果と魔力の放出によって弱体化したヴァルドボルグなど、敵ではない」
「...!!」
シルバラはもう抑え込める余力がなく、狂った高笑いを浮かべるギンナを、戦闘による損傷で次々と血が溢れだす口を手で抑え、倒れ込むことしかできない。
「最早ここからの勝ち目は無い。さっさとヴァルドボルグを弱らせ、
「...ロウ...」
「!!!」
「...死んじゃいや...」
「そんな!!まさか、意識が...ぐァあっ!」
動揺で動きを止めたギンナに、鋭いシルバラの連撃。斜めに入った攻撃は二の字の傷を作り、ドレス風の白い戦闘服に赤い線を刻む。
「戦いの途中に余所見は厳禁、ですぞ!!」
「ふっ...ふははっ...だが。ロウは葬った、これだけで私の目的は半分達成されている!」
ピクリとも動かないロウを抱き締めて、ヴァルドボルグは一瞬涙する。だが、ニヤリと笑いギンナを見つめた。
「さーて。そろそろお帰りかな」
「"お帰り"?貴様、それは一体!」
「こういうことさ」
「があっ...!!!」
突如ギンナの背後に現れた"勇者ロウ"が、背中に二連撃。一文字の傷跡を作る。
「まさか。あれは最初から!」
「そう。高精度な分身だったんだよ」
ヴァルが抱きとめていたロウが煙をたてて、一瞬にして消滅する。
「あぁ...まさか、そんな...」
「良いってことよ。主役は遅れてやってくるってな。さ!あとは...」
シルバラ、ロウ、ヴァルドボルグの三人がギンナに一斉に視線をうつす。
「アイツを倒すだけだな」
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