第十六話 緊張
「だから、さっきから何度も言っているだろう!俺は学園の生徒なんだよ!」
「今、大陸は緊張状態にある。魔族はおしなべて進入禁止にせよとの命令だ」
「だからって...誰の命令だ!」
「ちょっとリング、落ち着きなって!ここは穏便に...」
「これが落ち着いていられるか!お前と長期の旅なんてそうそう無いんだぞ!?俺は何にもしてないのに、こんなのってあんまりだ!」
掴みかかろうとする俺の肩をファニーが握る。その力は、彼の全力だ。肩が抉れそうな痛みを感じて、俺は冷静になる。
目の前の男は、あくまで無表情。職務しか頭に無さそうな顔をしたまま、咳払いをした。
「質問に答えよう。キーアを治める帝国からだ」
「キーアを...そうか。新勢のジーモ帝国だな」
「博識だな。その通り。ジーモの偉大なる女王、ギンナ様の命令だ」
新勢帝国ジーモ。ヴァルドボルグがリベリオンを擁護しているという通説に不満を持った人々が、革命の女王ギンナを中心に結成した国家だ。
「リベリオン駆逐のためにウィント地方に近いキーアに拠点を置き、統治者が居ないのを良いことに半ば強引に国をまとめたとか聞くが」
濃い紺色の隊服を着こんだ男は、顔も態度も動じない。腰に刺した刀剣を抜刀する素振りすら見せない。
おそらく、実力を見切られて嘗められている。
「何とでも言うがいい。だが何と言おうと、貴様らに決定権は無い。例え迂回路であろうとも、北へ通行することは許さん」
「くっ...」
「別の手を探そう、リング。僕はまだ諦めた訳じゃない」
「おやおや、お困りのようですねぇ、お二方」
「赤髪...」
「僕らは通ります。いいですよね?」
赤髪は余裕ぶっているが、汗だくで息が上がっている。後ろの白髪の方はというと、もう肩で息をして手に膝をついている。無理矢理走らされたのだろうか?若干、白髪の方だけには同情を覚える。
「当然だ。だが、くまなく身体検査と手荷物検査はさせてもらうぞ、学生ども」
「ふん。後ろめたいものは何も持っていませんよ...おや。何か"視えた"のかな、ホワイト」
うつむいていた、ホワイトの目が開眼する。
「...防御を展開しろ、魔族」
その目から、俺は一瞬にして察知する。
「ああもう!いいか、俺の名前はリングだからな、覚えとけよ!」
関所の人間含めて、すべてを守る防御を展開する。目の前の衛兵が腰の剣に手を添え、こちらを睨み付ける。
「貴様、何を...」
「いいから伏せろ!!!」
そう、叫んだほんの、一秒にも満たないわずかな時間のあと。
ドパァアアアアアアアン!!!
魔法が全方向から一斉に着弾。あっという間に、シャボン玉状の結界にヒビが入る。
「ぐっ...まさか!」
攻撃役職が、結界の外へ各々武器を構え、ファニーは魔導書を手元に出現させ回復の構えを取る。
そこにいたのは、こちらの予想通り。
「動くな、
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