第七話 合流
「ぐぁっ!」
「うわっ!!」
「ガッ!!」
「ぐほぉっ!!」
なんだ。何が起きている?ファニーが首を絞められたと思ったら、今度はリベリオンの奴等がフッ飛んで...
「久々に来たと思ったら、生徒たちに随分と手荒な真似をしてくれたみてぇだな」
「ぐぁっ!」
「ぐぼぉっ!」
「があっ!!」
どんな手段を使っているのかすらよく分からない。だが、リベリオンの奴等がちり紙みたいに宙を舞って、一ヶ所に集められている。
「『究極癒(アルテマヒール)』」
毛深い竜魔族はそう唱えると、食堂全域に緑の光を振り撒いた。
「なんだっ...傷が...全部塞がっていく」
ナニもんだ。...いや待てよ。この強さ、まさか。
「ヴァルドボルグ...13世」
その瞳の中には、優しく強い光が宿る。
「大人しくしていれば善かったものを。殺さないでやるから本拠地に帰りな」
「...つ...つぇえ」
ヴァルドボルグ学長は全体をぐるっと
見渡して、残党が居ないかどうかを確認した。
「春先からこんな目に合わせてしまってすまない。先生方も、生徒を守ってくれて感謝する。ここからは任せてくれ」
食堂の一角に纏められた魔族たちは、拘束魔法で動けなくなっている。まあ、あの状態じゃ拘束なんかしなくても動けそうにはないが。
「お前たちには色々と聞きたいことがある。だが、それより先に」
ヴァルドボルグが、指揮者のように手を振る。すると割れたガラスやら食器やらが全てぴったりと張り付き、ふわふわと浮いて元の位置へと戻っていく。すごい。戦った上にこんなことまで出来る魔法使いはそうそういない。とんでもない上澄みだ。
「では、これから全校集会だ。全員、一階の大会議室に集まりなさい」
静寂が辺りを包む。
そりゃあ、そうか。あらゆる種族の融和を目的として作られたこの学校ですら、魔族はどこか距離を置かれている。
産まれて20年も経たない俺のような魔族でさえそうなのだから、かつての世界を恐怖で支配した魔族であるヴァルドボルグが嫌われるのはある種当然。
「...あの」
「なんだい」
「助けてくれて有難うございます。ヴァルドボルグ様」
「生徒を助けるのは当然のことだ。...君は、竜魔族なんだね」
「あぁ、はい。一年じゃ、俺一人です」
「たしか名前は、リングと言ったかな」
瓦礫やガラスが、器用に生徒たちを避けて元の位置へと戻っていく。そんな不思議な空間で、初めて俺はヴァルドボルグと邂逅を果たした。
「...すまない」
え?なんで急に謝ったんだ、この人。
ああ。
「別に、みんなは怪我とか治ってるし、だれも死んでないし」
「ああ、いや。君は、ここで普段つらい思いをしていないかと」
学校が修復されていく音に紛れて徐々にがやがやと喋り出す生徒の中、ヴァルドボルグの声はまるで自分にだけ語りかけているかのようだった。
「お気遣いは大変ありがたいですが、俺には友達もいますし。大丈夫です」
「友達?他の、竜魔族でない魔族かな」
「え?ああいや、狼人ですけど」
ピクリ、と、一瞬だけ瞳孔が動いたようだ。
それからヴァルドボルグは視線を、魔力の消耗でつかれてへたりこんでいるファニーに向ける。
「その子、首を絞められたときに治癒魔法を全身にかけて殺されるのを遅らせていたみたいだね。流石は、学園最強の回復魔法使い手だ」
なるほど。この人、あまりここに来ないにも関わらず生徒のことは概ね把握しているようだ。だが、俺たちが長年つるんでいる幼馴染みということまでは知らないらしい。
「ファニー。よかったら魔力、わけるよ」
「お...う、うん。ありがとう」
なんだ?なんか、視線感じるな。
「あ、あの」
「...なんだい」
「そんなに珍しいか?狼人とつるんでるの」
「あ、ああ。いいや」
どもった。昔、何かあったのだろうか?
「その友達、大切にするんだよ」
「あ、はい」
なんだ?強いけど変な人だな。
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