竜魔王の息子 未来編 ヴァルドボルグXV世の誕生

芽福

プロローグ 訓練闘技場

「試合終了一分前!!」


暖かい春の風が吹く、商業都市ルーハ。その中央から外れた場所にある平地に、四人の知的生命体が居た。レンガブロックによって人工的に作られた障壁が彼等を分断し、その周囲はシャボン玉状の結界におおわれている。その大きさは、およそ半径100m。


「リング」


「おう」


「バッジの数は?」


「見りゃわかんだろ?五個全部、まだ残ってるぜ」


「よかった。盗まれてはいないか」


「そりゃそうだろ。けど、どうする?この調子じゃあ引き分けだぜ」


魔竜のリングと、狼人のファニー。互いの死角をカバーしながら、相手の出方を伺っている。リングが防御障壁を展開、ファニーはリングが受けた傷を治療していた。


「体力勝負なら余裕で勝てるのに」


「そうも言っていられない。どうにかして相手から一個くらいは奪わないと」


二人は木の杖を持って、レンガの壁三枚ほどで隔てられた相手ペアからの攻撃を警戒する。


「やっぱり飛び出す?」


「バカ言え。接近したら俺たちが不利なのは目に見えてるだろ?」


「でもここで待ってても勝てないよ」


「そりゃそうだけど...」


「残り30秒!!」


場外から、審判の声が鳴り響く。


「...」


「おい、どうしたファニー」


ファニーは、リングが展開した青いバリアの中にいる。だが、視線を落とし、拳を握りしめていた。


「変わらなくちゃ...」


「おい、何いってんだよ。今は視線を上げて警戒を...って、おい!待て!!バリアの外に出たら!」


「うぉおおおおお!!!」


空中を飛行し、相手チームの元へ。


「お、おい!オマエ、ロクな攻撃手段無いくせに、そんな無茶苦茶!」


「回復魔法がある!ある程度の傷なら、なんとかなるよ!」


「戻ってこいって、ファニー!!」


ファニーが杖に手をかけ、相手のチームのペアの頭上へ。


「はっ。ようやく尻尾を出したな、ファニー...お返しだ!」


相手チームのアタッカーが、杖を向ける。


「うぎゃあああああ!!!」


派手な爆発が、結界内に生じる。風圧がレンガの壁の一部を弾き飛ばし、リングの防御結界にもヒビが入り始めた。


「あんの、馬鹿野郎ォ。まさか勝機をわざわざ逃しに行くなんて。おおーい、大丈夫かぁ?」


「試合終了!全員攻撃やめ!ただいまより、判定を行います!!」


審判の掛け声と共に、結界が解除。倒れて目がぐるぐるになったファニーと、駆け寄るリング。その様子を笑う、ライバルチームがいた。












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