第三十七話 人質

「なーるほど。お前の幸せを預かった、ねぇ。私はノーカンか」


「しかし、良かったじゃないですか。亜空間に行っていたお陰で我々は助かりましたし、奪還のための作戦を立てましょう」


「...しかし、今でも信じられないな。シルバラがこっちに居るの」


「時間限定です。私は今極めて不安定な状態に有り、いつ崩壊してもおかしくないと」


...時間限定。


「そんな顔をなさらないでください。大事な戦いの前ですよ」


...ああ、そうだ。


今は彼らをどうにかして取り戻さなくては。


「魔王城地下に潜入するマスターキーがある。おそらく彼らは地下のどこかに囚われている...という読みで間違いないかな?そして、次」


イヴに続き、作戦を述べる。


「ヴァルと俺のせいしが彼らの目的と仮定すると、恐らく引き換えになるのは彼らの命だ」


「そう。結局はそこなんだ。...考えられる手段まほうはいくつかあるが、結局は相手の出方次第だな」


「つまるところ、アドリブか...」


一方的に与えられた三日の猶予。それが本当なのかどうかさえ、こちらにはわからない。


「予定より早く行くか?」


「いや。奴は三日後の六時"に"来いと言った。下手に約束を反古にするよりも、相手の出方に乗ることを優先したい」


「了解した。では、それまでにできることをしよう」




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「ヴァルドボルグの力を利用するために協力を申し出たい、と」


「ええ。極力貴方のやりたいことには干渉しないわ」


「...好きにしろ」


「あら以外。断られるものかと思っていましたのに」


「私はただ彼に会いたいだけだ。お前とは違う」


「それじゃあね」


ヒラヒラと揺れる、白い手袋。


「...目障りだ。何もかも」


口をついてでたのは、そんな言葉。




------




「里帰りだ。久しぶりだな」


無機質な灰色に無数のガラスが貼り付く、直方体の建造物。


「魔王城」

















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